この記事はブラック企業にお勤めで、なぜブラック企業がなくならないかと思っている方に向けて書きました。
ブラック偏差値の高い社長の本音はどんなことを考えているのか、実話を元に再現しました。
うちの事務所とお付き合いのある企業は素晴らしい会社が多いのですが、一部ブラックな状態を改善しようとしない企業もあります。
この記事を読めばなぜブラック企業が存在するのか、そしてその企業の将来がどうなるかを予測することが出来るようになります。
なかなか表に出てこない情報を知り、ブラック企業から身を守れるようになりましょう。
衝撃ブラック発言 やる気のないやつは首にしたいんだよね
ある顧問先から連絡を受けました。
その顧問先は労働トラブルが多く、今回もちょっと重い相談でした。
先生、いつもお世話になります。今いいですか?
あ、社長、いつもお世話になっております。
はい、大丈夫ですよ。
ちょっと相談なんですけど、従業員をクビにする方法はありますか?
・・・え?
クビですか?
なにかあったんですか?
いや、ちょっとクビにしたい従業員がいるんですよ。
なんかいい方法ないですかね?
いや~、そのクビの理由が気になります。
そもそもクビって色々法律があるんですよ。
そうだよね。
それは分かってるんだけど、従業員がなかなかやる気を出さないんだよ。
やる気のないやつはクビにしたいんだよね。
・・・そうでしたか。
まあ、やる気を出さないっていうのは改善したい所ですが、クビってのはちょっと急ですよね。
もともとやる気って科学的に分析されているんですよ。
有名な理論もあるんですよね。
学説では・・・。
あ~、先生。
そういうのいいですから、そういうのじゃ無いんですよ。
・・・だめでしたか?
う~ん、もういいや。
先生、またかけなおします。
あ、承知しました。
それでは失礼します。
ここで社長との話はいったん終わりました。
クビとなると労働基準法に定めがあるのですが、結構大ごとです。
いったい社長がなぜそう考えたのかが、分からないままでしたが、数日後また電話がありました。
あ、先生ですか?お世話になります。
先日は済みませんでした。
社長、お世話になります。
いえいえ、全然大丈夫ですよ。
たしかクビというか、解雇のご相談でしたかね。
そうなんですよ。
いや、正直に言うと、従業員のモチベーションを上げたいんですよ。
そうでしたね、解雇ってなると結構大ごとですよね。
う~ん、まあそうなんだけど。
でも解雇っていうことで従業員に危機感持ってもらって、どんどん自発的に動いて欲しいんだよね。
だって、会社の目標が達成されていないのに、みんな何にもしないんだよ?
普通追加で営業かけたりするでしょ?
なのに早く帰ったりしやがってさ。
あ~、そうでしたか。
そういうことだったんですね。
でも社長、従業員さんに解雇とか言っちゃうとみんな怖がったり、モチベーション下がってしまう可能性もありませんか?
「こんな会社辞めてやる!」みたいな。
・・・・・・。
もうどうしたらいいか分からないんだよ。
社長、モチベーションってちゃんと科学的に分析されてるんですよ。
例えば、給料上がるとモチベーション上がるとかありますよね。
実は違うんですよ。
モチベーションに一番効果があるのは仕事へのやりがいや、権限の大きさなんですよ。
そうなの?
先生がこの前言ってた学説ってそのこと?
はい、今度ご訪問するときに資料を交えてご説明しますね。
やっぱり恐怖で人を動かすって、正直難しいと思うんですよね。
なので、従業員さんがポジティブになれるような働きかけをしていった方がいいですよ。
そっか、まあ確かにクビって言われてやる気は湧かないかも知れないね。
では先生、今度そのあたり教えてください。
はい、承知しました。
では訪問の日程は〇〇日で・・・・・・。
ブラック企業がなくならない理由 社長もどうしたらいいか分からない
社長がクビ!と言い出した元々の発端は、会社の業績目標が達成にほど遠いのに、従業員さんは自発的に行動しようとしない事でした。
クビをチラつかせることで、従業員さんに「クビにならないように頑張ろう!」と思わせようとしたのですが、なかなか難しいようでした。
法令順守といったコンプライアンスが叫ばれているこのご時世で、この手の相談はちょっと時代遅れなのですが、従業員さんはたまったものではありません。
後日訪問しモチベーションのメカニズムを説明すると、ちょっとやり方を変えてみようとのこと。(詳細は後述)
1カ月後くらいに連絡があり、業績によってインセンティブを与えようと相談を受けました。
例えば、数万円の一時金の支払いや、飲食店の優待券などです。
ちょっとでも従業員さんと寄り添う姿勢が出てきたので、そのまま良い方法に進んて欲しいと思います。
恐怖で支配しようとする会社で、成功したのを見たことがないな~。
やっぱりチームワークって大事!
モチベーションも理論があります
ハーズバーグの二要因理論というものがあります。
この二要因というのは衛生理論と動機付け理論に分かれるのですが、とても効果のあるモチベーション理論です。
アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した理論ですが、200人のエンジニアや経理担当事務員に対して質問を行った際のデータとなります。
概要を下記の図にまとめたので、確認してみてください。
ハーズバーグの二要因理論(動機付け・衛生理論)
簡単に言うと、衛生要因は不足すると不満足を引き起こすが、満たされても仕事の満足感にはつながらないというものです。
例えばお給料が低いと不満足になりますが、お給料が上がっても継続的な満足感にはつながりません。
上がった直後は良くても、次第に昇給の満足感を忘れていきます。
似た要素として、職場の人間関係の良し悪し、会社の福利厚生などがあります。
お給料を上げればモチベーションアップが継続、じゃないんです。
一方で動機付け要因は仕事の満足感に直結します。
例えば課長に昇進したという場合、今までの仕事ぶりが認められたことになり、やりがいやモチベーションにつながります。
また、課長に昇進したことで責任も大きくなりますが権限も大きくなり、「よし、やるぞ!」といったモチベーションにつながりやすいことが分かっています。
社内でモチベーションを上げたいと思っている社長はたくさんいますが、このような理論を活用しているケースは少数派です。
どうしても、社長がサラリーマン時代に受けてきた方法で対策を考えてしまうのです。
この辺りは社長に勉強してもらうしかありませんが、すぐにクビにしたがるブラック企業偏差値の高い会社は、転職を視野に入れるのも手です。
エマ先生、最近は人不足もあって解雇ってあまり聞かないですね。
そうなんだよね。
だから解雇で従業員さんをコントロールするのって、ちょっとないな~。
色んな意味で認められません!
解雇から法律が守ってくれる
解雇に関しては労働基準法がしっかり従業員さんを守ってくれます。
基本的な内容を確認してみましょう。
解雇はあらかじめ予告が必要
社長が「あなた、明日から来なくていいよ」というのは解雇に当たりルールがあります。
労働基準法の条文に下記があります。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
引用元:労働基準法第20条
原則として解雇を伝達するときは30日前に言わなければなりません。
従業員さんがいきなり解雇といわれてしまうと、生活が出来なくなってしまうからです。
そして、もし「明日から来なくていいよ」としたいのであれば会社は30日分のお給料を支払えというものです。
条文上の平均賃金というのはざっくり言うと日給相当分なのですが、こうした法律があるので、社長の気分次第で解雇は出来ないようになっています。
いつでも解雇できる訳ではない
また、労働基準法には解雇禁止のタイミングがあります。
専門用語で解雇制限といいますが、ここでも社長の勝手な行為を禁止しています。
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が・・・中略・・・休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。
引用元:労働基準法第19条
労働基準法は従業員さんの生活を脅かさないように、従業員さんを保護しています。
ケガで治療の為に休んでいる期間、産前産後で休んでいる期間に解雇されたらたまったものではありません。
ちなみに違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
権利を自分勝手に使う解雇はダメ
社長が「なんかアイツ気に入らないから解雇」とか「能力低いから解雇」というのは基本的に認められません。
当たり前といえば当たり前なのですが、社長もいろんな人がいます。
法律の条文を見てみましょう。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:労働契約法第16条
つまり、第三者が見てその解雇は妥当か、一般的に見て解雇がふさわしいか、という視点で見ようという意味です。
このような条文があること自体どうなの?という感じですが、法律はあらゆる角度で従業員さんを守っています。
解雇の実際の裁判例
実際の裁判でも解雇の権利を濫用している場合は、会社が負けています。
裁判例も見ておきましょう。
成績不振の営業職が解雇対象となったが、人事異動を行い別の仕事に就かせる、あるいは降格という手段もあるのに、いきなり解雇は認められないということで解雇は無効と判断。
引用元:森下仁丹事件 大阪地裁 平成14.3.22
会社の企画室長及び販売課長として勤務していたが、営業成績が上がらなかった。ただ、権限も限られていて、成績が上がらなかったのは本人のみの責任であるとは言えないとして、解雇無効となった。
引用元:リマークチョーギン事件 東京地裁 昭和60.9.30
やっぱり解雇って、本当に最終手段ですよね。
そうだね。
例えば無断欠勤を繰り返す、あるいは横領とかはしょうがないけど。
まじめに働く人に言っちゃいけないよね。
なんかモチベーションって、複雑ですね。
ただ、恐怖による支配がうまくいかないのは、分かる気がします。
そう、だからしっかり法的知識を身につけて、会社に振り回されないようにしないとね。
今日の自分の努力が、明日の自分を救う、だね!
まとめ
ブラック企業の社長の発言は、たいして深い考えもなく言っていることが多いんです。
どうしたらいいか分からず、違法なことに手を染めようとする社長がいます。
社長も人間だもの・・・で、徐々に成長してくれれば良いのですが、まったく考えを変えないブラック社長もいます。
もし会社に未来はないと思った方は、転職を視野に入れるのもありかも知れませんね。