【PR】この記事には広告を含む場合があります。
「有給休暇、取りたいけど取れない…」そんな悩みを抱えていませんか?
日本の多くの働く人が直面するこの問題。
有給休暇は法律で保障された権利なのに、なぜ取得しづらいのでしょうか。
職場の雰囲気、業務の忙しさ、そして自分自身の遠慮してしまう心。
様々な要因が絡み合い、有給休暇の取得を妨げています。
この記事では有給休暇とは何なのか、法的な知識を分かりやすく解説します。
「有給休暇を取得したら、周りの目が気になって…」
「上司にどう切り出せばいいの?」
「私は有給休暇を取れる権利がないのかも?」
こんな不安や疑問にも、一つひとつ丁寧にお答えします!
私は労務管理に15年携わってますが、今までの経験を活かし、より具体的に分かりやすく有給休暇の基本ルールをお伝えします。
この記事を読むことで、あなたは有給休暇を気兼ねなく取得できるようになり、仕事とプライベートのバランスを改善できるでしょう。
さあ、今こそ有給休暇の本当の価値を知り、あなたの働き方を変える第一歩を踏み出しましょう。
今すぐ「ブラック企業から抜け出す方法を知りたい」方は、「転職がしやすくなる、案件豊富なおすすめ転職サービス」を見てください。
有給休暇の基礎知識
有給休暇とは労働基準法で年次有給休暇と呼ばれています。
よくある事例に、会社を風邪で休んでしまった時に有給休暇を使う場面があります。
会社側が勝手に有給休暇を使ったことにしてしまうケースもありますが、これは問題ないのでしょうか?
法的な枠組みを確認してみましょう。
有給休暇は原則として自己申告制
有給休暇とは、従業員が自ら希望する時期に有給休暇を取得する権利です。
つまり会社が勝手に有給休暇を消化させるといった行為は原則としてできません。
労働基準法に下記の条文があります。
使用者は ~中略~ 有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
引用元:労働基準法第39条
上記の条文の通り、労働者が請求する時期に与えることが必要です。
この権利のことを法律用語で「時季指定権」と言います。
エマ先生、ちょっと質問いいですか?
実際中小企業で有給休暇の取得って進んでるんですか?
う~ん。
進んでる会社もあれば進んでいない会社もあるかな~。
そうなんですね。
進んでいる会社といない会社の違いって何があるんですか?
色々あるけど根本の要因は経営者、社長さんの気持ち次第かも。
気持ち・・・ですか。
それって具体的にどういうことなんですか?
たとえば有給休暇の取得が進んでいる会社の社長さんと話すと、有給休暇に否定的な話はしないんだよね。
「有給休暇が取れないと求人集まらないからね~」とか「そういう時代だよね~」といった感じで、いろんな意味で受け入れてる感じかな。
なるほど、そんな感じなんですね。
進んでいない会社はどんな感じですか?
「オレの若い頃は有給休暇なんて取れなかった」「やる気があるヤツは有給休暇なんて取らない!」とかかな。
なんか有給休暇を取らせるのが難しいというより、そもそも有給休暇を敵対視している感じに近いかも。
なんか、ある意味分かりやすい構図ですね。
でも法律が施行されて、だんだん受け入れる企業が増えますよね。
受け入れないとヤバくないですか?
そうなんだよね。
出来る出来ないは、実は社長さんの心の中にあることが多いと思う。
結構深い話なんですね。
でも、きちんと法律を守って欲しいです!
実際に有給休暇を取らせないブラック社長を知りたい方は【実録】ブラック社長のヤバい衝撃発言2選 有給休暇編を見てください。
有給休暇の時期を会社が変更する時もある
一方で、会社が従業員の申請した有給休暇の時季を変更できる権利があります。
これを労働基準法において「時季変更権」といい、下記の条文が定められています。
ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
引用元:労働基準法第39条
ちなみに、どのような場合に事業の正常な運営を妨げるかは具体的に法律で決まっていませんが、単に「繁忙期だから~」というのは認められていません。
過去の判例で見ると下記の事例で時季変更権が認められています。
認められた事例
- 繁忙期に有給休暇取得者が多数
- 集合研修の予定日に有給休暇申請あり
- 長期(24日連続)の有給休暇申請
上記の事例は「さすがに会社の言い分も妥当だろう」といった判例です。
ただ、当たり前ですが会社は時季変更権を濫用することは禁じられています。
その行使には正当な理由が必要であり、慎重に扱うべきです。
有給休暇の付与日数
有給休暇は正社員とパート・アルバイトでもらえる日数が変わってきます。
具体的な日数を確認してみましょう。
正社員の場合
正社員の場合、有給休暇の付与日数は勤続年数によって異なります。
法律で定められた日数があるので、おおまかな日数は把握しておきましょう。
継続勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
0.5年 | 10日 |
1.5年 | 11日 |
2.5年 | 12日 |
3.5年 | 14日 |
4.5年 | 16日 |
5.5年 | 18日 |
6.5年以上 | 20日 |
エマ先生、この表ってどう見るんですか?
そうね、これは会社に勤務している期間に応じて日数が増えていくの。
例えば0.5年は半年なんだけど、最初にもらえる日数は10日になってるよね。
はい、たしかにそうですね。
そこから1年経過すると全部で1年6ヵ月勤務しているよね。
はい、入社から1年6ヵ月経つことになります。
そうなるともらえる日数は11になるの。
なるほど!
その勤務年数に対応する日数がもらえるわけですね。
ちなみに、もらった有給休暇は全部合計してくんですか?
たとえば10日と11日と12日で33日もってるぞ!みたいな。
いや、足せるのは2年までなんだよ。
だから入社から1年6ヵ月経って、有給休暇をまったく使わないと10日と11日を合計して23日が手持ちの日数になります。
具体例
①入社から半年後 ⇒ 10日付与
②そこから1年後 ⇒ 11日付与
①+②=23日
合計23日が手持ちの有給休暇
はぁ~、なるほど。
なんとなく分かってきました。
そうすると最大の付与日数は20日だから、最大の手持ち日数は40日になる感じですか?
ご名答!
ちなみになぜ足せるのが2年までかというと、有給休暇の時効が2年だからなの。
そういうことだったんですね。
なんか割とシンプルですね。
ちょっと難しく考えてました!
パート・アルバイトの場合
パート・アルバイトにも有給休暇が付与されますが、正社員と計算方法が異なるため内容をしっかりと確認しておきましょう。
パート・アルバイトの有給休暇日数は、通常とは違う「比例付与」というパターンがあります。
比例付与になるのは下記の両方を満たしたときです。
比例付与の条件
①週の所定労働日数が4日以下
②週の所定労働時間数が30時間未満
①と②両方満たすと比例付与
つまり、上の例で該当していれば比例付与なので、場合によってはパート・アルバイトでも通常の日数の場合があります。
例えばパート・アルバイトでもフルタイムでたくさん働いている人は、比例付与にはならないケースが多いので注意しましょう。
もし比例付与の場合は、下記の表に記載されている日数が付与されます。
⇒スマホは右にスクロール出来ます
週所定労働日数 |
1年間の所定労度日数 |
0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
エマ先生、パート・アルバイトの比例付与ってちょっと難しそうですね。
たしかにね。
パート・アルバイトの場合はちょっと注意が必要なの。
まず、週の所定労働日数でもらえる有給休暇の日数が変わるのよ。
そのようですね。
でもパート・アルバイトって週の所定労働日数って決まってない場合もあると思います。
学生でバイトに出られる時に出勤するみたいな。
テスト期間は休みとか・・・。
そうなの。
だから、そういう場合は過去1年間の実績で見るようになってるの。
なるほど!
だから1年間の日数が設定されてるんですね。
あれ?
でも最初の6ヵ月って1年間無いですよね。
その場合はどうすればよいですか?
その場合は6ヵ月経った時点で過去の実績を2倍にして、1年間に当てはめるの。
仮に6ヵ月の出勤実績が50日だったら、100日とみなして確認する感じね。
そういうことなんですね!
とてもスッキリしました。
半日、時間単位で有給休暇を付与することができる?
実は有給休暇は1日単位でなくても取得できるようになっています。
半日・時間単位で取得できる制度があり、ワークライフバランス向上と有給休暇取得促進に効果的です。
まずは半日の有給休暇、「半休」について具体例を見てみましょう。
半休の具体例
勤務時間9:00~18:00
①9:00~13:00のみ出勤して後半は半休
②前半は半休で14:00~18:00のみ出勤
①または②両方とも認められます
上記によりお子さんの行事で半日だけ休みたい、ちょっとした用事を済ませて出勤したいなどのニーズを満たすことが出来ます。
ただ、就業規則にはきちんと明記が必要になるので、半休を取りたい場合は会社の就業規則を確認してみましょう。
つぎに時間単位の有給休暇、「時間単位年休」の事例を見てみます。
時間単位年休の具体例
勤務時間9:00~18:00
16時に退勤して2時間の時間単位年休取得
当日の給与はマイナス無し
上記のように有給休暇を細切れで取得出来る、柔軟な制度が時間単位年休です。
ただし時間単位年休の運用は注意点があり、単位は1時間、そして導入するには労使協定の締結が必要です。
また、時間単位年休を取得出来るのは1年で5日分までとなります。
エマ先生、有給休暇って結構いろんな取り方があるんですね!
時間単位年休とか、とても働きやすくなるんじゃないでしょうか?
そうなの。
最近はテレワークも珍しくないから、時間単位年休との合わせ技とかもいいよね。
フレックスタイム制も導入している企業が増えていて、実は働きやすい会社とそうでない会社の差が広がっているの。
働く方からすれば、柔軟な働き方が出来る会社の方がいいですよね。
人材不足ってよく聞くけど、会社の制度ってとても重要なんじゃないかな~。
働きづらくて人材が定着しない会社もあると思います。
確かにそうね。
私たちがアドバイスして、少しでも働きやすい会社を増やしていきたいね!
はい、頑張ります!
有給休暇が付与される条件
有給休暇が付与される条件は、入社したタイミングから見てある程度出勤している実績が必要です。
一定の期間以上勤務して、またその期間中の出勤率も条件が求められます。
具体的な有給休暇付与の条件を見てみましょう。
勤務開始から6か月間継続して勤務していること
有給休暇が付与される主要な条件の一つは、勤務開始日から6か月間継続して勤務していることです。
この条件は、正社員、パート・アルバイトを問わず、全ての労働者に適用されます。
労働基準法には下記の条文があります。
使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用元:労働基準法第39条
ちなみに継続勤務というのは雇用の形態や契約更新の有るなしにかかわらず、実質的な労働関係の継続性を重視します。
たとえば定年後に再雇用になった、労働契約の期間が更新された、パート・アルバイトが正社員になった場合も継続勤務とみなします。
また、会社の合併・事業譲渡・会社分割等により労働契約が承継されたなども継続勤務に含みます。
パート・アルバイトから正社員になったらリセットで有給休暇なし・・・は違法です!
全労働日の8割以上を出勤すること
労働基準法に基づき、有給休暇が付与される条件の一つとして全労働日の8割以上の出勤が必要です。
この全労働日というのは出勤する予定の所定労働日という意味であり、休みの日は全労働日には含みません。
また、全労働日から除かれるものがあります。
全労働日から除かれる日
- 使用者責任で休業になった日
- ストライキなどで仕事がなかった日
- 休日労働させた日
上記は簡単に言うと、出勤しなくても8割以上の計算に影響がないということです。
また、出勤していなくても出勤したと取り扱ってくれる日があります。
出勤したものと取り扱う日
- 業務上のケガなどで休業した日
- 産前産後の女性が休業した日
- 育児や介護で休業した日
- 有給休暇を使用した日
これらを確認しながら全労働日の8割以上を出勤しているかを計算します。
では、実際に出勤率を計算してみましょう!
出勤率の計算方法
実際の具体例をみながら出勤率の計算してみましょう。
計算例
【Aさん半年経過】
・全労働日130日
・実際の出勤日数95日
・業務上のケガで休業10日
出勤率=((95+10) ÷ 130) × 100 ≒ 80.8%
⇒8割以上の出勤率を満たすため、有給休暇が付与される
実際に具体例で見るとわかりやすいですね!
そうね、自分の例で計算してもいいかもね!
有給休暇が付与されるタイミング
初回付与は雇入れ日の6ヶ月後
有給休暇の初回の付与タイミングは入社から6ヶ月後となっており、法律で定められた労働者の権利です。
会社はこのルールを遵守し、適切なタイミングで労働者に付与される有給休暇日数を伝え、取得を促す必要があります。
付与タイミングの具体例を見てみましょう。
初回の付与タイミング
【Aさんの場合】
入社した日:2023年4月1日
6ヶ月経過日:2023年10月1日
初回の有給休暇付与日:2023年10月1日
この例ってすごくシンプルですね!
あとは1年ごとに付与されるんですよね?
そうね。
ただ会社によっては、もっと働く人に有利な制度を導入しているケースがあるの。
へぇ~、そんな制度があるんですか。
具体的に教えて欲しいです!
では、次の例を見てみましょう。
前倒しで付与される場合
有給休暇は、労働基準法で定められた付与要件を満たせば、前倒しで付与することができます。
これは労働者にとって有利な措置であり、労働基準法は原則として基準を上回っていれば会社の裁量で制度を導入することが可能です。
たとえば、入社直後に一定の日数を付与して残りを6か月経過後に付与するパターンがあります。
具体例を見てみましょう。
より労働者有利な制度
【Bさんの会社場合】
入社した日:2023年4月1日 ⇒ 5日付与
6ヶ月経過日:2023年10月1日 ⇒ 5日付与
労働基準法より有利な制度を導入している
上記は労働基準法より有利な制度なので問題ないのですが、有利と見せかけて不利な制度は労働基準法違反です。
たとえば入社して有給休暇を5日付与、半年後に2日しか付与されない・・・といったケースは法定基準の10日に満たないので認められません。
有給休暇の前倒し付与は、労働者のモチベーション向上や会社の魅力向上に繋がる有効な手段です。
有給休暇に関する違反事例
有給休暇を取得する理由を言うように強要された
有給休暇を取得する理由をしつこく聞くことは、労働基準法違反に該当する可能性があります。
有給休暇は労働者が理由を問わず自由に取得できる権利であり、会社はこれを保障する必要があります。
エマ先生、たしかに有給休暇を取る時に理由をしつこく聞かれるのは勘弁ですね。
そうだよね。
厳密に言うと労働基準法には、理由を聞くのを禁じるルールはないの。
ただ、理由をしつこく聞くことで有給休暇取得にプレッシャーがかかるよね。
ホントですよ!
「ヤバい、部長に色々詮索される~」みたいになって、結果的にあきらめるとか。
いいことありませんよ。
だから会社側は有給休暇を使う側に配慮しないとね。
有給休暇の申請書には理由は書かなくてもいいとかね。
実際の申請書の事例を見てみましょう。
あ~なるほど。
たしかに書類には理由を書かなくてもよくなってますね。
これなら申請しやすいです!
そうね。
あとは申請を受けるのは管理職が多いから、適切な対応について研修するとかも必要だね。
会社全体で有給休暇を取りやすい雰囲気を作らなきゃね!
ルールに従って有給休暇を申請したのに拒否された
就業規則上のルールに従った有給休暇申請を拒否することは、原則として労働基準法違反に該当します。
会社は労働者の権利を侵害しないよう、法令に則した適切な対応を取る必要があります。
たとえば、下記のような事例は労働基準法に違反している可能性が高いでしょう。
社長、有給休暇を申請します。
就業規則では2週間前期限だから前もって申請書出しますね。
コタロウ君、その時期は繁忙期だから休めないよ!
有給休暇は認められないな。
でも社長、期限までに提出していますし、繁忙期だけでは正当な理由にならないようですよ。
そんなこと言ってもダメ!
オレに逆らうなんて許さないぞ!
・・・・・・。
心の声(こんな会社やめてやる!)
上記のような事例では期限内に有給休暇の申請をしているにも関わらず、社長は有給休暇取得を実質的に拒否しました。
これは労働基準法違反と言われても仕方ありません。
もうひとつの事例を見てみましょう。
社長、有給休暇を申請します。
就業規則では2週間前期限だから前もって申請書出しますね。
コタロウ君、その時期は重要なプロジェクトの締め切りと重なっていて君の担当業務も多い時期なので、大変申し訳ないが別の時期への変更をお願いできないだろうか?
あ~、たしかにそうですね。
社長、分かりました。
では2か月後の〇日~△日は大丈夫でしょうか?
よし、分かった。
それでは、済まないが有給休暇申請書を修正して再提出してくれないか?
承知しました!
修正して、また提出いたします!
上記の事例は会社側として正当な理由があり、時季変更権を適正に行使しているので模範的なやりとりと言えるでしょう。
上記の事例のように、社内でしっかりコミュニケーションを取りながら有給休暇を活用するのが理想ね!
有給休暇を欠勤扱いにされ、給料が減らされた
有給休暇を取得したにも関わらず、欠勤扱いにして給料を減らすことは明確な労働基準法違反です。
そもそも有給休暇は労働者が賃金カットの心配なく休暇を取得できる権利で、会社は労働者に対してその分の賃金を支払う義務があります。
会社は労働基準法の遵守を徹底し、労働者との信頼関係を築くことが必要となります。
あまりにひどい扱いの場合は、退職を検討するのもありかも知れません!
退職の手続きを具体的に知りたい方は【必見!】退職の流れと書類を社労士が解説|チェックリスト付き!を見てください。
有給休暇の金額の計算方法
有給休暇の賃金の計算方法は3つあり、一つ目は通常の賃金の場合、二つ目は平均賃金の場合、三つ目は健康保険の標準報酬日額を使用する方法があります。
会社はどれを使っても良いのですが、事前に就業規則に定めておく必要があります。
それぞれ見ていきましょう。
通常の賃金の場合
所定労働時間を働いたら支払われる通常の賃金のことです。
具体例は下記となります。
通常の賃金
月給300,000円の場合
月の所定労働日数 20日
1日あたりの賃金 300,000円 ÷ 20日 = 15,000円
有給休暇取得日 15,000円支給
最も多く導入されている制度で、計算も簡単で分かりやすい特徴があります。
有給休暇を使っても、いつももらっている額と同じになり働く側も安心できる制度です。
平均賃金の場合
平均賃金とは直近3か月間の賃金の総額をその期間の総日数で割った金額です。
具体的には以下のように計算します。
平均賃金
過去3ヶ月の賃金828,000円の場合
3ヶ月暦日数 92日
828,000円 ÷ 92日 = 9,000
平均賃金 9,000円支給
ただし、パート・アルバイトのような時給制の場合は別の計算式を使うことがあり、平均賃金は通常の賃金と比べると少しと複雑な計算となります。
健康保険の標準報酬日額
有給休暇の賃金額を計算する際、健康保険の標準報酬日額を基準とする方法もあります。
標準報酬日額とは健康保険の標準報酬月額を30日で割った金額です。
具体的には、以下のように計算します。
標準報酬日額
標準報酬月額300,000円の場合
300,000円 ÷ 30 = 10,000円
標準報酬日額 10,000円支給
ただし、上記の標準報酬日額を導入する場合は労使協定といった会社と労働者の取り決めが必要です。
エマ先生、それぞれ特徴がある制度ですね!
そうよね。
一番人気は「通常の賃金」かな~。
分かりやすいし、計算もしやすいの。
そうなんですね。
制度の運用に関してなにか注意点はあるんですか?
3つの制度をコロコロ変えない事ね。
どれを使うかは就業規則にきちんと定めて、活用するルールがあるの。
なるほど!
たしかにその方がみんな納得しやすいですよね。
よく分かりました!
有給休暇の繰り越しと時効
労働基準法では有給休暇の繰越しについて定めており、会社はこれを遵守しなければなりません。
また、繰越された有給休暇にも時効が存在するため、労働者も自身の権利を理解しておく必要があります。
繰り越しの具体例
そもそも前提として有給休暇は時効が2年となっています。
これは言い換えれば、毎年発生する有給休暇は1回しか繰り越せないということになります。
具体例を見てみましょう。
繰り越しの具体例
2023年4月1日 ⇒ 10日付与
2023年度は6日使用
余った4日は2024年度に繰り越し可能 ⇒ 2025年度には繰り越し不可
2024年中に消化できなければ4日は消滅!
有給休暇の繰越制度は労働者が十分な休暇を取得し、心身ともに健康を維持するために重要な制度です。
会社は法令を遵守し、労働者に対して適切な情報提供(有給の残日数など)を行う必要があります。
有給休暇の買い上げについて
有給休暇の買い上げは原則として認められていません。
ただし、時効により消滅する有給休暇や、退職時の未使用有給休暇については買い上げが可能です。
具体的な例を見てみましょう。
有給休暇買い上げ
退職時の未使用有給休暇 10日
1日あたりの賃金 15,000円
買い上げ金額 10日 × 15,000円 = 150,000円
150,000円を退職時に追加で支払い
ただ、ひとつ注意点があって会社が未消化分を買い上げるのは義務ではありません。
退職時に未消化分の買い上げを交渉するのもよくあるケースです。
そもそもの有給休暇の未消化蓄積を出来るだけ避けて、会社全体で未消化分を取得促進するべきでしょう。
有給休暇取得と不利益取り扱い
労働者が有給休暇を取得したことを理由に、企業が解雇、降格、減給などの不利益な扱いをすることは労働基準法で明確に禁止されています。
労働基準法の条文を見てみましょう。
使用者は ~ 中略 ~ 有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
引用元:労働基準法第136条
精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならない。
引用元:労働基準法通達(昭和63.1.1 基発第1号)
エマ先生、通達で精皆勤手当がなんちゃらって何ですか?
よくあるダメな行為のことよ。
有給休暇取ったら皆勤手当払わないとか。
マジですか!
それ、最悪じゃないですか!
あとは有給休暇とったらボーナスの査定を落とすとかね。
ひどい、ひどすぎる・・・。
ほかに嫌がらせ、昇進の対象から外す、退職勧奨、有給休暇をとらせない雰囲気を作るとかも聞くことがあります。
もし会社全体がそんなひどいブラック企業の場合は、転職活動も視野にいれてみて。
しっかり有給休暇を取らせてくれる会社もあるんです!
実際に公表されているブラック企業名を知りたい方は、厚労省が公表!法令違反のブラック企業リストを見てください。
転職がしやすくなる!案件豊富なおすすめ転職サービス!
大手で求人案件が多く、転職を成功に導くおすすめの転職サービスを紹介します。
圧倒的案件数で充実の支援体制「リクルートエージェント」
Good point
- 公開求人数、非公開求人数ともに20万件以上を確保
- 支援システムが充実、進捗管理用マイページや職務経歴書エディターも利用可能
- 経験豊富なキャリアアドバイザーの「面接力向上セミナー」も開催
求人数が業界トップクラスで、各業種に精通しています。
キャリアアドバイザーが応募書類、面接対策、面接日程の調整、面接後のフォローなど幅広くサポート。
特に非公開求人数が多く、自分では見つけられなかった意外な求人の紹介もあるかも知れません。
幅広い職種と手厚いコンサル支援「アデコ」
Good point
- 37年の人財ビジネスの実績があるため、企業理解が深い
- 営業やIT、一般事務など多岐にわたる職種の求人が豊富
- 応募書類の準備〜面接対策まで専任コンサルタントのきめ細かいサポート
今後のキャリアプランを見据えた相談や、応募書類の書き方、面接時のアドバイスもあって安心のサービス。
平日夜の転職相談の対応しており、企業側との調整や退職手続きの相談など、転職活動をトータルに支援します。
上場しており長年の豊富な実績で、確実な転職活動には外せないサービスです!
国内最大級の転職サイト「リクナビネクスト」
Good point
- 企業オファーを利用できて、好条件企業と巡り合える可能性あり
- 中小企業の登録が多く、IターンやUターンなどの地方転職にもメリット
- グッドポイント診断を活用し、自分の強みを18種類の特性から発見することが可能
転職サイトで情報を幅広く収集できるので、人的支援が充実した転職エージェントと相性が良いです。
20代から30代の求人が多く5割以上を占め、若手向けサービスと言えるでしょう。
頻繁に連絡が来る転職エージェントと違い、自分のペースでサイトを閲覧、情報取得が可能です。
年5日の有給休暇取得義務とは
2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して会社は少なくとも年5日を取得させる義務があります。
労働基準法の条文を確認してみましょう。
使用者は~ 中略 ~有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち5日については、基準日~ 中略 ~から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
引用元:労働基準法第39条7項
すこし難しい条文ですが、簡単に表現すると「1年間で5日以上有給休暇を取得しなさい」という意味です。
そして、対象者は10日以上の有給休暇の日数が与えられる人限定の措置となり、社員やフルタイムに近いパート・アルバイトの方が5日以上取得する義務があることになります。
具体的な制度の運用方法を見ていきましょう。
運用方法(1)従業員に任せる
厚生労働省のガイドラインによると、会社は従業員が有給休暇を取得しやすい環境を整えることが求められています。
具体例としては、取得が進まない場合には上司が個別に面談を行い取得を促進する方法や、取得状況を可視化するためのシステムを導入し、従業員が自分の取得状況を簡単に確認できる方法などがあります。
運用方法(2)企業側が従業員に対し、個別に時季指定する
年5日の有給休暇取得義務化において、会社側が従業員に対し個別に時季指定することは法律上は認められています。
しかし、それは5日に対してのみであり、運用方法によっては労働者の権利を侵害する可能性があるので注意が必要です。
時季指定の具体例
Aさん手持ちの有給休暇40日
5日のみ会社が時季指定可能 ⇒ 取得義務あり!
残り35日は原則としてAさんの希望時期となる
ただし、当然時季指定にあたっては労働者の意見を聴取しなければなりません。
また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努める必要があります。
運用方法(3)計画年休を導入する
計画的付与制度は会社が時季を指定して有給休暇を取得させる制度であり、年5日の取得義務化を達成する有効な手段となり得るとされています。
運用方法(2)との違いは、計画年休は会社で一斉に有給休暇を取得するといったイメージです。
具体的には下記のカレンダーのように夏季休暇として計画年休を活用し、大型連休を取得するパターンがあります。
あるいは、飛び石連休の場合は休日の橋渡し的に「ブリッジホリデー」として計画年休を活用する方法もあります。
ちなみに、この計画年休は会社全体の活用を想定していますが、班別やグループ別も認められており柔軟な運用が可能となっています。
大型連休キター!
テンション上がってモチベーションアップよね!
有給休暇を取得できなかった場合の罰則
有給休暇を取得させなかった場合は罰則があり、下記の表の通りとなります。
⇒スマホは右にスクロール出来ます
違反内容 | 罰則内容 |
年5日の有給休暇を取得させなかった場合 | 30万円以下の罰金 |
労働者の請求する時季に所定の有給休暇を与えなかった場合 | 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
罰則は労働者1人につき1罪となるので、10人違反していたら10人分の罰則となります。
たとえば、10人が有給休暇を取得していなければ300万円といった罰則です。
ただ、現実的には事前に労働基準監督署から指導が入り、改善を促されるケースがほとんどとなります。
有給休暇のキホン 知っておくべきポイント まとめ
有給休暇は働く人のモチベーションアップに直結する重要な制度です。
最後にもう一度、内容を確認しましょう。
まとめ
- 有給休暇は原則として自己申告制
- 半日、時間単位で有給休暇を付与することもできる
- 6か月間継続勤務して8割以上の出勤率が必要
- 一定の人に対して年5日間を取得させる義務あり
ブラック企業は有給休暇の違反をしているケースがほとんどなので、どのようなことが違反かを理解しておきましょう!
有給休暇のキホン 知っておくべきポイントに関するQ&A
有給休暇はパートでも取得できますか?
労働条件によって日数は変わりますが、取得できます⇒詳しくはこちら
有給休暇が残ったまま退職したらどうなりますか?
会社が買い上げるケースがあります。⇒詳しくはこちら
有給休暇を取得させなかった場合、会社に罰則はありますか?
罰則があり、人数分の罰金制度などがあります。⇒詳しくはこちら
この記事の監修者
社会保険労務士 タカハシ
顧問先100社を持つ社会保険労務士事務所の代表。
日々の労務相談の経験から、リアルなブラック企業の実態を知る。
ブラック企業を減らし、幸せな職場を増やすべく日々奮闘中。