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「職場のハラスメント…、もしかして自分も被害者?加害者?」
モヤモヤした不安や疑問を抱えながら、このページにたどり着いたのではないでしょうか?
「あの人の発言セクハラだと思うけど…」
「毎日上司に怒鳴られて仕事に行くのが辛い。でも、これってハラスメントになるの?」
職場の人間関係はホントに複雑で、判断に迷う場面も多いです!
この記事では職場で起こりうる様々なハラスメントの種類を具体的に解説し、それぞれのハラスメントに適切に対する方法を紹介します。
もう一人で抱え込む必要はありません。
私は労務管理に15年携わってますが、今までの経験を活かし、より具体的に分かりやすくハラスメントの基本ルールをお伝えします。
この記事を読むことで、あなたを苦しめている状況が、れっきとしたハラスメントであると認識できるようになります。
各ハラスメントに合わせた効果的な対処法を身につけることで自分自身を守り、安心して働ける環境を手に入れることができます。
あなたもこの記事を通してハラスメントの悩みから解放され、より良い職場環境を手に入れませんか?
さあ、一緒にハラスメントについて学び、より働きやすい未来を目指しましょう。
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ハラスメントの定義と基礎知識
あなたは大丈夫?
知らないうちに加害者、被害者になっているかも!
「職場におけるハラスメント」とは何か、確認してみましょう。
職場におけるハラスメントとは
職場におけるハラスメントとは、職場で働くものが優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、相手に精神的・身体的苦痛を与える行為をいいます。
これは道徳的な問題だけでなく法律で禁止されている行為であり、企業にもその防止が義務付けられています。
ハラスメントの具体例を確認してみましょう。
⇒スマホは右にスクロール出来ます
ハラスメントの種類 | 具体例 |
パワーハラスメント | 上司が部下に対して、人格を否定するような発言を繰り返し行う。 |
セクシュアルハラスメント | 同僚が、他の同僚に対して、性的な冗談を言ったり、不快な視線を送ったりする。 |
マタニティハラスメント | 妊娠中の従業員に対して、上司が「産休を取ると迷惑だ」と発言する。 |
職場におけるハラスメントは、放置すると従業員の精神的・身体的健康を害するだけでなく、会社にとっても生産性の低下、訴訟リスクの増加、企業イメージの低下など大きな損失につながる可能性があります。
ハラスメントの統計データの実態
職場におけるハラスメントは、氷山の一角に過ぎず、表面化していないケースが数多く存在します。
近年では従来のパワハラ・セクハラ・マタハラだけでなく、新しいタイプのハラスメントも存在しており、その実態把握と対策が急務となっています。
実際の統計データは下記のようになっています。
引用元:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」統計データその1
【過去 3 年間に各ハラスメントの相談があった企業の相談内容】
・パワハラ(64.2%)
・セクハラ(39.5%)
・顧客等からの著しい迷惑行為(27.9%)
・妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(10.2%)
・介護休業等ハラスメント(3.9%)
・就活等セクハラ(0.7%)
あれ?
エマ先生、この統計って全部足すと100%超えませんか?
ちょっと見方が難しいよね。
これはハラスメントの相談が従業員さんからあって、それぞれのハラスメントが含まれていた割合なの。
A社はパワハラ相談があったけど、B社はセクハラ相談のみだった・・・とか。
なるほど。
ということは、ハラスメント相談があってパワハラ案件を含んでいたという会社が64.2%なんですね?
そうなの。
ハラスメントはパワハラとセクハラが多いようね。
一方で、最近カスハラが伸びているらしいの。
顧客等からの著しい迷惑行為ってやつですね。
会社は従業員さんをハラスメントから守って欲しいです!
引用元:厚生労働省「令和4年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」統計データその2
【上位のハラスメントの相談内容】
・いじめ、嫌がらせ69,932件(22.1%)
・自己都合退職42,694件(13.5%)
・解雇31,872件(10.1%)
・労働条件の引き下げ28,287件(8.9%)
・退職勧奨24,178件(7.6%)
・就活等セクハラ件(0.7%)
これは主に厚生労働省で対応した労働相談の統計データなの。
エマ先生、いじめ、嫌がらせは分かるんですけど、自己都合退職ってなんですか?
たとえば、学生アルバイトさんでバイトを辞める意思を伝えたのに、辞めさせてもらえないとか。
アルバイトさんも困っちゃうよね。
そういうことですか。
アルバイトさん、ちょっとかわいそうですね。
ホントよね。
しかも、上位の相談内容は多くがパワハラ絡みだから、ハラスメント対策は超重要なの。
なんか時代のニーズって感じですね。
勉強になります!
ハラスメントの重さと法律の関係
ハラスメントのレベルは軽微な行為から重大な犯罪まで幅広く、その法的位置づけも行為の内容や程度によって異なります。
たとえば、上司が部下を殴るといったような暴力と、性別を理由に昇進の機会を与えないのは両方とも問題がありますが、問題の重さが異なります。
重さMAX・刑法上の犯罪レベル
このレベルのハラスメントをやってしまった場合、逮捕や起訴、刑事罰を受ける可能性があり非常に悪質な行為です。
いわゆる犯罪を犯したことになります。
具体例
- 暴行や傷害:上司が部下を殴る
- 強制わいせつ:性的な行為を強要する
結構重い・民法上の不法行為レベル
犯罪とまでは言えないが、相手に明らかな損害を与えた場合が該当します。
加害者は損害賠償で訴えられる可能性があります。
具体例
- 名誉毀損:みんなの前でAさんの能力を否定する発言を繰り返す
- プライバシー侵害:個人的な情報を無断で公開
少し重い・ハラスメント系法令違反レベル
法律の中にはハラスメントを防止することを目的として施行されているものがあります。
具体的には下記の法令がそれぞれ対応しています。
ハラスメントの種類 | ハラスメント系の法律 |
パワハラ | 労働施策総合推進法(パワハラ防止法) |
セクハラ | 男女雇用機会均等法 |
マタハラ・パタハラ | 育児介護休業法 |
ケアハラ | 育児介護休業法 |
ハラスメント系法令違反レベルの具体例は下記があります。
具体例
- 均等法違反:性別を理由に昇進の機会を与えない
- 育児介護休業法:介護休業取得を理由に嫌がらせ
軽い・会社のルール違反レベル
会社内の就業規則や各種規程、ルールなどを違反してしまったケースが該当します。
最近は色々なハラスメントがあり、アルハラはアルコールハラスメントですが、これを防止する法律がありません。
社内でアルハラ禁止ルールを作成、周知していたのに飲酒を強制してしまった場合などが当てはまります。
法律には無いから、会社のルールを軽んじる・・・は当然NGです!
職場の代表的なハラスメントの種類
最近の職場では様々なハラスメントが存在します。
どのようなものがあるのか、具体的に確認してみましょう。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)は職場における最も深刻な問題の一つであり、労働者の尊厳を傷つけ健康被害や生産性低下を引き起こす可能性があります。
厚生労働省の定義によると、職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素を全て満たすものとされています。
パワハラ要素
- 優越的な関係を背景に
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
- 労働者の就業環境を害すること
また、パワハラは厚生労働省が示す6つの類型に基づいて分類されます。
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代表的な言動の類型 | 該当すると考えられる例 |
1. 身体的な攻撃 | 殴る、蹴る、物を投げつける |
2. 精神的な攻撃 | 人格を否定する言動、過度に厳しい叱責、他の従業員の前で罵倒する |
3. 人間関係からの切り離し | 無視する、会議から外す、必要な情報を与えない |
4. 過大な要求 | 明らかに達成不可能な目標を設定する、未達成時は厳しく叱責する |
5. 過小な要求 | 能力や経験とかけ離れた簡単な仕事しか与えない、仕事を与えない |
6. 個の侵害 | 私生活に過度に立ち入る、職場外でも付きまとう |
パワハラの実際の事例を知りたい方は、【実録】ブラック社長のヤバい衝撃発言 体罰与えた方が早く伸びる編を参考にしてください。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメント(セクハラ)は職場における重大な人権侵害であり、被害者の尊厳を傷つけ、労働環境を著しく悪化させる問題です。
厚生労働省の定義によると、職場におけるセクシュアルハラスメントとは以下の2つに分類されます。
1. 対価型セクハラ
性的な要求への服従または拒否を理由に、解雇、降格、減給などの不利益を与えること
2. 環境型セクハラ
性的な言動により、就業環境を害すること
セクハラの具体例は以下のようなものがあります。
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セクハラの類型 | 具体的な例 |
1. 身体的なセクハラ | 不必要な身体接触、肩や腰に手を回す |
2. 言語的なセクハラ | 性的な冗談やからかい、容姿や年齢に関する不適切な発言 |
3. 視覚的なセクハラ | わいせつな画像や動画を見せる、性的な内容の電子メールを送信する |
4. ジェンダーハラスメント | 「女性は〇〇すべき」といった性別役割分担意識に基づく言動 |
マタニティハラスメント(マタハラ)/パタニティハラスメント(パタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とパタニティハラスメント(パタハラ)は職場における重大な問題であり、早急な対策が必要です。
会社はこれらのハラスメントを防止し、働きやすい環境を整備することが求められています。
具体的な例は下記が挙げられます。
マタハラの例
- 妊娠を報告したら、突然降格させられた
- 産休・育休の取得を理由に退職を強要された
- 妊娠を理由に、同意なく別の部署へ異動させられた
パタハラの例
- 育休取得を申し出たら、昇進の機会を失った
- 「男性が育児をするのはおかしい」と上司から言われた
- 育児のための時短勤務を認めてもらえなかった
モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメント(モラハラ)は、目に見えにくい精神的な暴力であり、職場環境を著しく悪化させる深刻な問題です。
モラルとは「倫理・道徳」のことであり、それに反する行為のことを指します。
パワハラと似ている面もありますが、決定的な違いはパワー、つまり権力の差を悪用するのがパワハラとなります。
たとえば、上司が部下に対して優越的な立場を利用して暴力や、非道な行為を行うものを指します。
一方、モラハラは権力の差は関係なく、同僚の間で行うケースなど、立場が関係ない場合モラハラに当てはまります。
モラハラの具体例は下記のようなものがあります。
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代表的な言動の類型 | 該当すると考えられる例 |
言葉による攻撃 | 人格を否定する発言(「お前にはセンスがない」「使えない奴だ」など) |
無視や排除 | 必要な情報を与えない、会議や打ち合わせに呼ばない |
過剰な監視や干渉 | 些細なミスを執拗に責める、プライベートな事柄まで細かく報告を求める |
不当な要求 | 能力を超える仕事を押し付ける、理不尽な締め切りを設定する |
実績の横取り | 部下の功績を自分のものとして発表する、チームの成果を独占する |
その他の職場ハラスメント(ジタハラ、アカハラ)
職場ハラスメントは、従来のセクハラやパワハラだけでなく、近年ではジタハラ、アカハラなど新しい形態のものも増加しています。
ジタハラ (時短ハラスメント)とは、時間短縮を求めて精神的プレッシャーなどを与える行為のことです。
働き方改革によって生産性を高め、残業を減らし時短を進めるのは良いことなのですが、行き過ぎたケースが散見されます。
ジタハラの例
- 仕事を時間内に終えられない社員に対し、非難したり嫌がらせをしたりすること
- 「時短なのに仕事が終わらないなんて、能力がない」と非難する
アカハラ (アカデミックハラスメント)とは、教育現場や研究機関などで起こるものです。
立場の優劣を悪用したハラスメントで、パワーハラスメントに類型されることもあります。
具体例を見てみましょう。
アカハラの例
- 大学などの教育・研究機関において、教員が優位な立場を利用して学生に対して行う嫌がらせ
- 学生の研究成果を認めず、自分の成果として発表する
- 学生の論文やレポートに対して、根拠のない批判を繰り返す
- 特定の学生だけを授業で無視したり、不当な評価をしたりする
以上が最近の職場のハラスメントの具体例となります。
会社はハラスメント対策を単なるコンプライアンスの問題としてではなく、組織の健全性と競争力を高めるための重要な経営課題として捉え、継続的に取り組んでいく必要があります。
パワーハラスメントの6類型と具体例
厚生労働省が定めるパワーハラスメントは「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害すること」となっています。
具体的には下記の6つの類型に分類されています。
身体的な攻撃
身体的な攻撃は最も分かりやすいパワーハラスメントの形態であり、暴力を用いたり相手に危害を加える行為を指します。
暴行や傷害罪などの刑事罰に問われる可能性もあり、会社は厳正に対処しなければなりません。
身体的な攻撃に該当する行為
- 殴る、蹴る、突き飛ばすなどの暴力行為
- 物を投げつける
- 髪の毛を引っ張る
- 熱湯や冷水を浴びせる
- 無理やり部屋に閉じ込める
想定されるシーン①
営業部の部長が部下の報告内容に激怒し、机を叩きながら怒鳴り散らした後部下の胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。
想定されるシーン②
工場長が、作業ミスをした従業員に対して安全靴の先で足を踏みつけ、「こんなこともできないのか!」と罵倒した。
「身体的な攻撃」は他のパワーハラスメントに比べてその行為が明確であるため、比較的判断しやすいと言えるでしょう。
しかし、暴言や威圧的な態度など他のハラスメントと複合的に行われるケースもあるため注意が必要です。
精神的な攻撃
精神的な攻撃はパワーハラスメントの6類型の中で最も発生頻度が高く、被害者の心理的ダメージが大きい形態の一つです。
脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言などが該当し、被害者の尊厳を傷つけ長期的な心理的影響を及ぼす可能性が高い行為です。
精神的な攻撃(軽度の例)
- 必要以上に厳しい叱責
- 他の従業員の前での過度な批判
- 意見を全く聞かない
精神的な攻撃(中度の例)
- 人格を否定するような発言
- 長時間にわたる叱責
- 威圧的な態度での指導
精神的な攻撃(重度の例)
- 暴言や侮辱的な言葉の使用
- 脅迫的な言動
- 個人の尊厳を傷つける言動
想定されるシーン
管理職A氏が、ミスをした部下B氏に対し、「お前はバカか!」「こんなこともできないなら会社を辞めろ!」などの暴言を、他の従業員の前で繰り返した。
B氏は精神的ストレスから体調を崩し、長期休職に至った。
「精神的な攻撃」の防止は健全な職場環境の構築と維持の核心部分です。
この問題に真摯に取り組むことで、従業員の心理的安全性を確保し、組織の生産性と創造性を高めることができます。
継続的な取り組みと改善を通じて、誰もが安心して能力を発揮できる職場づくりを目指すことが重要です。
パワハラの具体的な事例を知りたい方は、【実録】ブラック社長のヤバい衝撃発言 やる気がないからクビ編を参考にしてください。
人間関係からの切り離し
「人間関係からの切り離し」は業務上必要なコミュニケーションを取らず、特定の従業員を孤立させたり集団から排除するなどして、精神的な苦痛を与えるパワーハラスメントです。
職場における従業員の所属意識や連帯感を奪い、孤独感や不安感を増大させる深刻な問題です。
具体例(無視・仲間外れ)
- 特定の従業員にだけ挨拶をしない、話しかけても無視する。
- 会議や飲み会に誘わない、重要な情報を与えない。
- 周囲の従業員に、特定の従業員と話をしないように指示する。
具体例(隔離)
- 特定の従業員だけ、他の従業員と離れた席に移動させる。
- 部署やチームから、正当な理由なく異動させる。
- 他の従業員との接触を極力避けるように指示する。
具体例(業務上の孤立)
- チームで取り組むべき業務を、特定の従業員だけに担当させる。
- 能力や経験に見合わない、単純作業や雑務ばかりを任せる。
- 業務に必要な指示や指導を全く行わない。
想定されるシーン①
ある従業員が上司の方針に反対意見を述べたところ、その後上司や同僚から無視されるようになり、会議や飲み会にも誘われなくなった。
想定されるシーン②
新人従業員が上司の指示通りに業務を行わなかったことを理由に、他の従業員と離れた席に移動させられ、誰とも口をきいてもらえなくなった。
「人間関係からの切り離し」は一見分かりにくいハラスメントですが、被害者にとっては、非常に苦痛で辛い状況です。
会社はこのような行為を早期に発見し、適切な対応をとる必要があります。
具体的には相談窓口の設置、事実関係の調査、加害者への指導・処分、被害者へのケアなどが挙げられます。
過大な要求
「過大な要求」は業務上必要な範囲を超えて、能力や経験を超えた無理な業務や達成不可能なノルマを押し付けることで、従業員に過度な負担やストレスを与えるパワーハラスメントです。
業務の遂行能力を著しく低下させたり健康を害するリスクもあり、会社は適切な業務指示を行う必要があります。
具体的な例を確認してみましょう。
能力や経験を超えた業務の強要
- 新人や経験の浅い従業員に、高度な専門知識やスキルを要する業務を任せる。
- 研修や指導を十分に行わずに、難しい業務を押し付ける。
達成不可能なノルマの押し付け
- 現実的に達成不可能な売上目標や目標達成期限を設定する。
- ノルマ達成のために、サービス残業や休日出勤を強要する。
業務量の過剰な増加
- 人員不足にも関わらず、特定の従業員に業務を集中させる。
- 他の従業員の業務を、正当な理由なく押し付ける。
業務遂行を妨害する行為
- 必要な情報や資料を提供しない、あるいは提供を遅らせる。
- 他の従業員に協力を依頼するよう指示しておきながら、実際には協力を得られないようにする。
想定されるシーン①
入社1年目の従業員に対し十分な指導やサポートを行わずに複雑な顧客対応や契約交渉を任せた結果、従業員は大きなストレスを抱え体調を崩してしまった。
想定されるシーン②
営業目標を達成するために毎月の売上目標を極端に高く設定し、達成できない場合は休日返上で顧客訪問を強要した結果、従業員は過労で倒れてしまった。
「過大な要求」は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを低下させるだけでなく、心身の健康を損なうリスクも孕んでいます。
会社は従業員の能力や経験、業務量などを考慮し適切な業務指示を行う必要があります。
また、従業員が安心して相談できる環境を整え、過度な負担を感じている場合は速やかに対応することが重要です。
過少な要求
「過少な要求」は能力や経験に見合わないほど簡単な業務や、明らかに仕事量が少ない状態を意図的に継続させることで、従業員の労働意欲や能力を低下させ精神的な苦痛を与えるパワーハラスメントです。
一見、優しい行為に見え隠れしますが、従業員の成長機会を奪いキャリア形成を阻害する可能性もあるため軽視できません。
具体的な例を確認してみましょう。
能力や経験を著しく下回る業務
- 高いスキルや豊富な経験を持つ従業員に対し、単純作業や補助的な業務ばかりを長期間に渡り任せる。
- 新しい知識やスキルの習得が期待できない業務のみを任せる。
極端に少ない業務量の付与
- 他の従業員に比べて、明らかに仕事量が少なく、時間を持て余している状態を放置する。
- 新しい業務を任せず、既存の業務範囲を縮小していく。
昇進・昇格の機会の不平等な付与
- 特定の従業員だけ昇進や昇格の対象から外される、あるいは遅らせる。
- 能力や実績に見合った役職や待遇を与えない。
想定されるシーン①
ある従業員は高い営業成績を収め顧客からの信頼も厚かったが、上司との関係が悪化した途端新規顧客の開拓や重要な契約交渉から外され、簡単な事務作業ばかりを任されるようになった。
想定されるシーン②
新しい技術や知識を積極的に学びたいと考えている若手従業員に対し、上司は「まだ早い」「失敗したら困る」という理由で簡単な業務しか任せず、新しい知識やスキルの習得機会を与えなかった。
「過少な要求」は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを低下させるだけでなく、キャリア形成を阻害し将来的なキャリア不安を生み出す可能性もあります。
会社は従業員の能力を最大限に引き出し、成長を促すような業務を与えるとともに適切な評価や処遇を行う必要があります。
個の侵害
「個の侵害」は従業員のプライベートな領域に過度に立ち入り、個人の尊厳や人格を傷つける行為を指します。
これは業務の範囲を超えた干渉であり、従業員の私生活を尊重する義務を怠る重大なパワーハラスメントです。
具体的な例を確認してみましょう。
私生活への過剰な干渉
- 交際相手や家族構成、経済状況、宗教、政治信条など業務に関係のないプライベートな情報を執拗に聞き出そうとする。
- 休日の過ごし方や服装、髪型など、業務に関係のない部分にまで口出しをする。
- プライベートなSNSへの投稿を強要する、あるいは制限する。
人格や尊厳を傷つける言動
- 性別、年齢、出身地、学歴、容姿、障害などを理由に侮辱的な発言や差別的な扱いをする。
- 過去の失敗やプライベートな秘密を、本人の許可なく他者に暴露する。
- 従業員の性的指向や性自認に対して、不快な言動を行う。
想定されるシーン①
上司が部下の女性に対し、「結婚はまだか」「子どもは作らないのか」などと執拗にプライベートな質問を繰り返した。
想定されるシーン②
ある従業員が上司に宗教上の理由で飲み会への参加を断ったところ、「付き合いが悪い」「協調性がない」などと非難され、その後重要な業務から外された。
「個の侵害」は、従業員の精神的な苦痛だけでなく、職場環境の悪化にもつながります。
会社は従業員の人格を尊重し、業務以外の事柄に不当に介入しないよう明確なルールを設け周知徹底する必要があります。
また、従業員が安心して相談できる窓口を設け、問題が発生した場合には迅速かつ適切に対応することが重要です。
ブラック企業はパワハラが多いから、しっかりと知識を整理しておきましょう!
ブラック企業の具体的な特徴を知りたい方は、ブラック企業の特徴8選|偏差値80~50までを参考にしてください。
エマ先生、パワハラって本当に精神的ダメージが大きいと思います。
長時間労働も嫌だけど、パワハラがあると会社に行きたくなくなりますよ。
そうだよね。
過労死って長時間労働が原因ってイメージがあるけど、実はパワハラがセットだったケースがとても多いの。
それだけ心理的な負担がかかるんだよね。
明らかにパワハラな会社の場合は、転職活動も視野に入れてみて。
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ハラスメントに関する法律
労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)は、職場におけるパワーハラスメントの防止を会社に義務付ける重要な法律です。
この法律により会社はパワハラ防止のための対策を講じる必要があり、違反した場合には会社名を公表される可能性があります。
目的となる条文を確認してみましょう。
この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し ~ 中略 ~ 労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
引用元:労働施策総合推進法(パワハラ防止法) 第1条
具体的なパワハラ防止対策などは先ほど確認した通りですが、2022年4月より中小企業も義務化され、いまでは全ての企業がパワハラ防止法の対象となっています。
男女雇用機会均等法
会社は職場におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いなどを防止するために、男女雇用機会均等法に基づき相談体制の整備や、事実確認、再発防止策など適切な対策を講じる法的義務があります。
目的となる条文を確認してみましょう。
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
引用元:男女雇用機会均等法 第1条
法律の条文は少し堅苦しく難しいのですが、男女雇用機会均等法のポイントは男性と女性に同じチャンスが与えられるべきといった考え方に基づいています。
ただ、現実的にはそうなっていないケースも多く、会社における禁止事項などを設けています。
雇用管理差別の禁止
募集や採用、人事異動、昇進、研修などの教育訓練、従業員の福利厚生、退職の勧奨、定年や解雇、有期契約の労働契約の更新について性別を理由とする差別を禁止しています。
想定されるシーン
- 幹部候補生を採用するときに「男性のみ採用」と募集媒体に掲載すること。
- 営業部門は男性が優先的に配属されること。
- 課長に昇進するための試験の合格基準を、男女で異なるものにすること。
- 工場内の研修受講に関して男性労働者のみ対象にすること。
- 会社の社宅制度を男性のみ対象とすること。
- リストラ対象者を既婚女性のみとすること。
- 女性労働者は有期契約を更新せず雇止めにすること。
これらに付随してセクシャルハラスメントやハラスメント対策、母性健康管理対策、紛争解決方法、会社名の公表制度などが盛り込まれています。
育児・介護休業法
会社は育児や介護を行う労働者が、その権利を主張したことを理由に不利益な扱いを受けないよう、育児・介護休業法に基づき、休業を取得しやすい環境整備や、相談体制の整備、ハラスメント防止対策を講じる法的義務があります。
目的となる条文を確認してみましょう。
この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り ~中略~ 資することを目的とする。
引用元:育児・介護休業法 第1条
この法律は育児や介護に関する休業などを従業員が希望した場合、会社は拒めないようになっています。
具体的には下記の育児介護の制度があり、従業員は全ての制度を活用できます。
法律に基づいた制度
- 育児や介護のための休業
- 働く時間の短縮措置
- 所定の時間を延長した残業の制限
- 子の看護をする休暇
- 1日8時間、週40時間を超える労働の制限
- 深夜業の制限
たとえば、育児休業を取りたいときは原則として1年まで休業が可能です。
また、お子さんが小さいと長時間働けないことから、残業や深夜労働をしない制度を使うことが可能です。
その他に、育児介護休業等に関するハラスメント対策や、企業名の公表制度なども盛り込まれています。
厚労省が公表したブラック企業名を知りたい方は、厚労省が公表!法令違反のブラック企業リストを参考にしてください。
職場ハラスメントの予防と対応方法
企業方針の明確化と周知・啓発
職場ハラスメントを効果的に予防するためには、会社が「ハラスメントを絶対に許さない」という強い意志を示すことが重要です。
そのため、ハラスメントに関する企業方針を明確化し、就業規則への明記や研修などを通じて全従業員に周知徹底する必要があります。
ホームページや社内報で公開、新入社員研修や管理職研修での周知、社内イントラネットにハラスメントるQ&Aコーナーを設け、従業員がいつでも情報にアクセスできるようにするなど、様々な事例があります。
ハラスメント相談窓口の設置
ハラスメントの発生を早期に把握し適切な対応を行うためには、従業員が安心して相談できるハラスメント相談窓口を設置することが重要です。
相談窓口は体制の整備として下記の点が重要となります。
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重視すべき点 | 具体例 |
相談しやすい環境づくり | 相談しやすい雰囲気づくり、相談しやすい時間帯の設定 |
相談窓口の明確化 | 社内窓口、外部窓口の設置、担当者の氏名や連絡先の明示 |
相談内容の秘密の保持 | 相談者のプライバシー保護、相談内容の守秘義務の徹底 |
相談者に対する不利益取扱いの禁止 | 相談したことによる解雇、降格、減給、不利益な配置転換などの禁止 |
具体的な取り組みの例①
人事部内にハラスメント相談窓口を設置し専任の相談員を配置しています。
相談員はハラスメントに関する専門知識を有する外部の社会保険労務士を委嘱し、従業員からの相談に適切に対応できる体制を整えています。
具体的な取り組みの例②
社内窓口とは別に外部の相談窓口として弁護士事務所と契約し、より専門性の高い相談にも対応できるようにしています。
具体的な取り組みの例③
相談窓口の案内は社内イントラネットや社内報に掲載するだけでなく、社員証の裏面にも記載し従業員がいつでも確認できるようにしています。
ハラスメント相談窓口は単に設置するだけでなく、従業員にとって相談しやすい環境であること、秘密が厳守されること、相談したことによって不利益な扱いを受けないことを明確に示すことが重要です。
また、相談窓口の担当者は専門知識や対応スキルを身につけていることが望ましく、定期的な研修などを実施することでより質の高い相談対応を目指していく必要があります。
アンコンシャス・バイアスへの対処
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)は、私たちが気づかないうちに特定の人やグループに対して抱いてしまう偏った見方や思い込みであり、意図せずハラスメントを引き起こす可能性があります。
ハラスメント防止のためには、まず自分自身がアンコンシャス・バイアスを持っていることを自覚し、その影響を抑制するための行動をとることが重要です。
具体的な例を確認してみましょう。
採用・昇進における差別
男性はリーダーシップがある、女性は協調性が高いといった固定観念に基づき、評価や選考を行ってしまう。
業務指示や評価における偏り
障がい者に対しては、配慮が必要という思い込みから、能力に見合った仕事を与えなかったり、昇進の機会を与えなかったりしてしまう。
このような偏りは無意識のうちに行ってしまっていることが多く、とても難しい問題です。
改善するためには研修などに参加し偏見に気づく、異文化と積極的に交流し多様な価値観に触れる、客観的な基準を事前に設定しておくなどがあります。
会社は従業員一人ひとりがアンコンシャス・バイアスについて理解を深め、互いに尊重し合える職場環境を構築していくことが重要です。
心理的安全性の高い職場づくり
ハラスメントのない職場環境を実現するためには、従業員が安心して発言・行動できる「心理的安全性」の高い職場づくりが重要です。
心理的安全性とは、「このチームの中では、自分の考えや気持ちを誰に対しても気兼ねなく発言できる」と感じられる状態を指します。
心理的安全性の低い職場の具体例を確認してみましょう。
発言しづらい雰囲気
上司の意見に反対すると否定的な反応を示されたり、不機嫌になったりするため発言を控えてしまう。
助けを求めにくい
業務で困っていても忙しそうな雰囲気や、過去の経験から誰にも相談できずに抱え込んでしまう。
多様性が認められない
性格や価値観の違いを認め合えず、特定の従業員に対して、陰口や悪口が横行している。
知らず知らずのうちに、上記のような職場になっている可能性があります。
改善するためには日ごろから気軽に意見交換をする、ハラスメントに関する定期的な研修を実施する、ミスを許容する雰囲気を作るなどが挙げ有られます。
ハラスメント防止の観点からも心理的安全性の重要性を理解し、組織全体で積極的に取り組んでいく必要があります。
ハラスメント対策の最新トレンドと今後の展望
近年ハラスメント対策において、AIやデータ分析などのテクノロジーを活用した予防策が注目されています。
従来の人材教育や相談窓口の設置に加えテクノロジーによる客観的なデータ分析や早期リスク検知は、より効果的かつ効率的なハラスメント対策を可能にする可能性を秘めています。
また、一方でリモートワークを導入している会社が増え、新たなハラスメントが問題になりつつあります。
いったいどのようなものなのか、詳しく解説していきます。
テクノロジーを活用したハラスメント予防
ハラスメントは密室で起こるケースも多く、目に見えにくいという問題点があります。
そのため被害の申告や事実確認が難しく効果的な対策が難しいという課題がありました。
最近ではAIを活用することでコミュニケーションデータの分析やリスクの高い言動の検知が可能となり、未然にハラスメントを予防できるようになりました。
具体的な例を見てみましょう。
コミュニケーション分析
社内メールやチャットツールなどのコミュニケーションデータをAIが分析し、ハラスメントの可能性がある発言を検知する。
また、管理者や相談窓口にアラートを通知することで、早期対応を促す。
感情の分析
音声認識や表情分析などのAI技術を用いて、従業員の感情状態をリアルタイムで分析する。
また、ストレスや不安の兆候を早期に検知することで、ハラスメント発生のリスクを低減する。
匿名相談チャットボット
従業員がハラスメントに関する相談をしやすいよう、24時間365日対応可能な匿名相談AIチャットボットを導入する。
相談データは統計的に分析され、ハラスメント発生の傾向把握や予防対策に活用される。
テクノロジーの進化により、今後ますます高度なハラスメント予防策が実現すると期待されています。
例えばVR(仮想現実)技術を用いたハラスメント研修や、脳波測定によるストレスレベルの可視化など新たな技術の応用が検討されています。
リモートワーク時代のハラスメント対策
リモートワークの普及に伴い従来の対面型とは異なる形態のハラスメントリスクが高まっています。
オンラインコミュニケーションツール上での発言や、勤務時間外の連絡など新たなハラスメントの温床を生み出さないよう、会社は環境整備や就業規則の見直しなど、早急な対策が求められます。
リモートワークにおけるハラスメントの実例を解説していきます。
オンラインハラスメント
- オンライン会議で特定の従業員だけ発言を無視したり、人格を否定するような発言をする。
- チャットツール上で、プライベートに関する詮索や誹謗中傷を行う。
カメラを通じたハラスメント
服装や部屋の様子など、業務に関係のない部分にまで過度に干渉する。
会社ではリモートハラスメント防止対策として、就業規則などでハラスメントの定義や禁止事項を明確化する必要があります。
また、管理職向けの研修や相談窓口の周知、コミュニケーションツールの活用など会社全体で取り組むのが望ましいでしょう。
会社はリモートワークにおけるハラスメントの特性を理解し、適切な対策を講じることで従業員が安心して働ける環境を整備していく必要があります。
ハラスメントのキホン まとめ
ハラスメントは働く人のモチベーションアップに直結する重要な制度です。
最後にもう一度、内容を確認しましょう。
まとめ
- ハラスメントはパワハラ、セクハラ、マタハラなどがある。
- パワハラは6つの類型がある。
- ハラスメントの法律はパワハラ防止法、均等法、育児介護休業法などがある。
- 最近ではリモハラ、AIを活用したハラスメント防止法がある。
ブラック企業はハラスメントをしているケースがほとんどなので、どのようなことが違反かを理解しておきましょう!
ハラスメントのキホン 知っておくべきポイントに関するQ&A
ハラスメントの定義ってなんですか?
優越的な関係を背景に必要な範囲を超えて、相手に精神的・身体的苦痛を与える行為です。⇒詳しくはこちら
パワハラの6類型ってどのようなものですか?
身体的な攻撃、精神的な攻撃などです。⇒詳しくはこちら
ハラスメントを予防するにはどうしたらよいですか?
会社の方針の周知、相談窓口の設置などです。⇒詳しくはこちら
この記事の監修者
社会保険労務士 タカハシ
顧問先100社を持つ社会保険労務士事務所の代表。
日々の労務相談の経験から、リアルなブラック企業の実態を知る。
ブラック企業を減らし、幸せな職場を増やすべく日々奮闘中。