この記事はブラック企業にお勤めで、なぜブラック企業がなくならないかと思っている方に向けて書きました。
ブラック企業の社長の本音はどんなことを考えているのか、実話を元に再現しました。
うちの事務所とお付き合いのある企業は素晴らしい会社が多いのですが、一部ブラックな状態を改善しようとしない企業もあります。
この記事を読めばなぜブラック企業が存在するのか、そしてその企業の将来がどうなるかを予測することが出来るようになります。
なかなか表に出てこない情報を知り、ブラック企業から身を守れるようになりましょう。
衝撃ブラック発言 遅刻とかすると給料5万円減るんだよ
顧問先になりたての会社の社長から問い合わせがありました。
遅刻や早退、欠勤についてペナルティが問題ないかとのことです。
あ、先生ですか?
先日はお越しいただいて、ありがとうございました。
ちょっといいですか?
あ、社長!
いつも大変お世話になっております。
はい、大丈夫ですよ。
ウチの会社でペナルティを与えてるんだけど、法的に問題ないのかな。
ペナルティですか。
具体的にはどんな内容でしょうか?
そうだね、たとえば遅刻とか早退、休んだ場合にペナルティを与えてるよ。
はあ、そうでしたか。
休んだ分をお給料から引いている、ということですかね?
例えば欠勤だったら1日分のお給料を減らすとか。
いや、役職者は遅刻とかすると5万円減るんだよ。
え?
5万円ですか?
そう、5万円。
だって役職者でしょ?
役職手当2万円、皆勤手当1万円、業務手当2万円で合計5万円を引いてるんだよね。
社長、随分引きますね。
休んだ分を引くだけじゃなくて、手当も減額ですか?
そうだよ、役職者はね。
だってさ、遅刻とか休みとか、役職者としてはありえないでしょ。
体調管理も仕事のうちだよ。
まあそうですが、社長、ちょっと引きすぎですね。
そうなの?
じゃあいくらまでならいいの?
労働基準法に減給の制裁っていうのがあるんですよ。
減給する場合の限度が法律にあるんです。
ざっくりですが1回の減給で日給の半分まで、1か月のトータルの減給は月給の10分の1までが限度です。
じゃあ、ウチの場合はいくらまでなの?
はい、仮に月給20万円で日給あたり1万円だったら、1回の減給は5千円までとなります。
その場合、1か月のトータルは2万円までの減給が限度です。
たとえば減給1回あたり1回5千円だと、月間で4回までが限度です。
御社の場合は遅刻すると手当を支払わないので、5万円の減額ですよね。
1回の遅刻でもこれだけ引くのは、法的にマズいです。
そうなんだ。
まあ、うすうす大きい金額とは思っていたけど、仕方ない面もあるんだよ。
仕方ない、といいますと?
いや、お恥ずかしい話業界的に荒くれ物が多いんだよ。
昔はヤンキーだったとかさ。
頻繁に遅刻するし、無断欠勤も平気でやるんだよ。
でも会社は回さなきゃならない、そうすると金額の大きさで従わせるしかないんだよ。
そういうことでしたか。
業界的に遅刻や早退、欠勤が多いんですね。
そうなんだよ。
だからペナルティを目立たせるようにして、従業員管理をしているんだよ。
まあ、法的にアウトなので金額は修正することとしましょう。
また就業規則に減給のルールを書いておかなくてはならないので、そちらも進めて参りましょう。
分かりました。
でも先生、実際ウチの会社のルールってどうすればよかったのかな。
そうですね、実は遅刻や早退、欠勤が多い会社ってある傾向があるんですよ。
どんな傾向?
はい、大まかにいうと従業員さんに厳しい会社です。
例えば、長時間労働や過酷なノルマがある会社は遅刻などが増えます。
肉体的、精神的疲労が溜まると思われます。
ふ~ん、なるほどねぇ。
他には?
パワハラ体質の会社です。
何かあると怒鳴られる、褒められない、会社のルールが厳しいなどです。
モチベーションのダウンが原因と思われます。
会社に行きたくなくなってしまうケースが想定されます。
御社の社内ルールを見ると、正直ネガティブな内容が多いですね。
〇〇だと減給する、▲▲だと不支給とする、▢▢だとペナルティーを与える・・・といった文言が目立ちます。
そっか・・・。
会社の社風から見直した方がいいのかな、先生?
そうですね。
まあ、こうなった経緯は色々あると思います。
ただ、これからは従業員さんのモチベーションの上がる会社を作っていきましょう。
出来ることから改善ですよ!
ブラック企業がなくならない理由 知識がない
これは実際の社長との面談で常々感じることですが、法的な知識がないと簡単にブラック化してしまうケースがあります。
今回はまさにそのケースに当てはまります。
ただ、これにはある事情があるんです。
労働の専門家である社会保険労務士の企業関与率、つまり何割の社長が社会保険労務士を利用しているかといった数字ですが、6割弱というデータがあります。
社会保険労務士の企業関与率56.4%
引用元:平成28年 社労士のニーズに関する企業向け調査結果
ちなみに、これに対して税理士は9割近いというデータがあります。
税理士の企業関与率89.5%
引用元:令和3年事務年度 国税庁実績評価書
これはあくまで推測ですが、適正に税金を納めるのは非常に難易度が高く、専門家の手を借りないと不可能といった実情があるのではないでしょうか。
それに対して、会社の労務管理ルールはなんとなく会社で作ることが出来るため、専門家である社会保険労務士に依頼せずに作ってしまう状況があると思います。
社長目線でいうと「余計な経費は使いたくない」といった気持ちがあるのでしょうが、労務管理を軽視してあとで労務トラブルに発展するというのは中小企業あるあるです。
中小企業にも従業員さんのことを真剣に考えてくれる、法令順守の会社が増えて欲しいところですね
エマ先生、この会社みたいにムチでコントロールしようとする会社ってうまくいくんですか?
う~ん、私が見てきた中ではないかな。
じゃあ、なんでこんなことするんでしょうか。
そうだな~。
見てて思うのは、社長さんが法律に疎いケースがほとんどかも。
勉強しようと思わないんですかね?
残念ながら思わない、あるいは勉強が面倒なんだと思う。
でもそれって、ちゃんとやれば業績が上がることでもあるんだよ。
ですよね!
僕もそう思います。
結局、苦手科目には手を出さないってことですかね。
そういうことだと思う。
苦手なのはしょうがないんだけど、専門家に依頼することは出来るよね。
問題は放置しちゃうことだね!
減給制裁に関する制限
労働基準法には賃金を減らす限度のルールが定められています。
引用元:労働基準法91条
- 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
- 総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない
➀については会話にあった通り、平均賃金が1万円としたら5,000円までが減給の限度となります。
②の一賃金支払期とは月給の方は1か月となります。
仮に月給20万円の方は20万円の10分の1、つまり2万円までが1か月に減らせる賃金の限度となります。
なにか失敗して、お給料減らされるときは気を付けてね!
金額の限度があります!
平均賃金とは?
平均賃金とは、実務上は単価の計算によく使います。
月給の方の日給相当分を出したいときに計算したり、いろんな場面で必要になります。
具体例としては、年次有給休暇の休んだ時の賃金額の計算に使ったりします。
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。
引用元:労働基準法12条1項
条文は小難しいですが、簡単にすると下記です。
3か月間の賃金総額 ÷ 3か月間の総日数 = 平均賃金
3か月間の総日数は土日も含めます。
例)7月~9月の賃金の総額が92万円の場合の平均賃金は?
【総日数】7月は31日間、8月は31日間、9月は30日間
92万円 ÷ 92日 = 1万円・・・平均賃金は1万円となります。
ちなみに交通費は賃金総額に加えて、夏や冬のボーナスは賃金総額から除きます。
ペナルティでお給料の減額があったときに、実際に計算してみてね!
まとめ
ブラック企業の社長の発言は、たいして深い考えもなく言っていることが多いんです。
知識がないだけで違法なことに手を染めようとする社長がいます。
社長も人間だもの・・・で、徐々に成長してくれれば良いのですが、まったく考えを変えないブラック社長もいます。
もし会社に未来はないと思った方は、転職を視野に入れるのもありかも知れませんね。