「残業代なんて払えるわけないだろ!」そんな驚愕の発言を耳にしたことはありませんか?
本記事では、実際にあったブラック企業社長の衝撃的な言動を暴露します。
なぜ彼らはそこまで従業員を軽視するのか、その背景にある本当の理由とは?
私は労務管理に15年携わってますが、今までの経験を活かし、より具体的に分かりやすくブラック企業の実態をお伝えします。
そして、このような状況に直面したときの対処法も詳しく解説。
ブラック企業に接触した実話を交えながら、労働者の権利を守る具体的な方法をお伝えします。
この記事を読めばブラック企業の実態を知り、自分や大切な人を守るための知識が身につくはずです。
衝撃ブラック発言 お金ないから残業代払わない
最近顧問契約があった社長から電話がありました。
従業員さんが退職になり、具体的な手続きについて確認したいとのことです。
どうも、いつもお世話になります。
先生、今大丈夫ですか?
あ、社長。
お世話になります!
はい、大丈夫ですよ。
うちのスタッフが退職になるんだよね。
色々手続きがあると思うんだけど、どうすればいいかな?
そうでしたか、それは残念ですね。
退職手続きはまず退職届をもらってください。
それと保険証は返却になりますね。
そっか、ちなみに退職する月は残業代はどうなるの?
はい、たしか御社はみなし残業を使っているので、退職する月も定額の残業代を払わないとですね。
え、そうなの?
辞めるのに丸々残業代を払うの?
おかしくない?
まあ、そうですね。
たしかに会社としては納得いかないかも知れないですが、みなし残業は毎月定額の残業代なんですよね。
なので退職するから減額とか出来ないんですよ。
いや~、それはちょっと払えないな。
減額で計算してよ。
社長、それマズいですよ。
さすがにそれは出来ません。
いやいや、社労士さんには迷惑かけないから。
いや、社長、そういう問題じゃないんですよ。
法的にブラックなんですよ。
そうなの?
う~ん、ちょっと払いたくないんだよね。
だって、アイツさんざん会社に迷惑かけたんだよ。
お客さんとトラブル起こすし、職場でも騒ぎやがってさ。
入社の時だって、他に仕事がないっていうから面倒見てやったんだよ。
恩を仇で返しやがって!
そうだったんですね。
たしかにご本人にも問題はあったかも知れないですが、だからといって残業代払わないってのはマズいですよ。
残業代って法的に決められているんですが、それを払うことが良い会社になる第一歩なんですよね。
きちんと社会のルールを守ることって大事ですよ。
いや、大事なのはお金でしょ。
金がなかったら会社やってけないでしょ?
まあ、それは確かにそうなんですが・・・。
ブラック企業がなくならない理由 お金が本当にない
この会社の給与体系を見ると、社長がかなりの報酬を貰っていました。
後日社長にこのことを伝え、同じ規模で同じ業界に比較すると報酬が高いのでは?と伝えると「そんなことは分かってる!来期は下げるよ!」とのことでした。
最終的に退職される従業員さんに残業代を払っていただきましたが、資金繰りがかなり厳しい様子でした。
自分の報酬を決める時に、会社の業績の見通しや報酬に連動した社会保険料など、見通しが甘かったと言わざるを得ません。
無い袖は振れないのは分かるんですが、自分の財布が厳しければ法律破っても良いという考えだと、従業員さんもたまったものではありません。
ブラック企業から身を守るためには、最低限の法的な知識を身に着けておきたいですね。
エマ先生、結局こんな社長もいるから、自分の身は自分で守らないとです。
そうだね。
今回は自分の報酬を高くしすぎて、やっちゃった感じね。
なんか結構やらかしちゃうブラック企業の社長多い気がします。
まあ、社長さんも人間だからね。
でも、ごまかすとかルールを破るのはダメだよね。
従業員さんは生活がかかっているから、ちゃんとやって欲しいです。
感情を抑えられなくてブラックとか、マジで社長失格では?
色々あるとは思うけど、会社の前に社会の一員って意識して欲しいかな。
最近ではブラック企業は会社名が公表されてるから、労務管理にしっかり取り組んで欲しいね。
厚労省が公表しているブラック企業の会社名を知りたい人は、厚労省が公表!法令違反のブラック企業リストの記事を参考にしてください。
ブラック企業対策!残業代の計算方法
残業代の計算方法は簡単なので、おおまかな計算方法は覚えておきましょう。
時給制の場合
残業代の計算のポイントは労働時間と割増率です。
1日8時間、または1週間で40時間を超えていたら超えた分の時給が1.25倍となります。
(例1)時給1,000円で1日10時間働いた場合
8時間×1,000円=8,000円
2時間×1,250円=2,500円
8,000円+2,500円=10,500円
1日のお給料は残業代を含めると10,000円ではなく、10,500円がもらえることになります。
(例2)時給1,000円で1週間44時間働いた場合
40時間×1,000円=40,000円
4時間×1,250円=5,000円
1週間のお給料は44,000円ではなく、45,000円もらえることになります。
1日8時間、週40時間はいろんなところで使うから、覚えておいてね!
月給制の一般的な残業代の計算方法
質問が多いのは月給制の場合ですが、労働基準法にはこんな条文があります。
月給制の場合の割増賃金の計算基礎となる賃金の1時間当たりの金額は、月によって定められた賃金をその月における所定労働時間で除した金額とされる。
引用元:労働基準法 通達 S23.3.17 基発461
ちょっと条文の表現が小難しいのですが、簡単に表現すると月給を月の所定労働時間数で割るという意味です。
そして、その割ったものに対して割増率1.25をかけるということです。
ポイントを押さえればそこまで難しくありません。
月給制の場合の具体例
月給 32万円
月間の所定労働時間数 160時間
32万円÷160時間=2,000円
この2,000円が割増賃金に使う金額となります。
もし仮に1日8時間、1週間40時間を超えた時間が1か月に10時間あったら、下記となります。
2,000円×10時間×1.25倍=25,000円
25,000円が割増賃金となります。
よってもらえる金額は下記です。
月給32万円+25,000円=345,000円
実務的にはもう少し細かい計算も入りますが、まずは大まかな計算が出来れば問題ないでしょう。
月のお給料を月の所定労働時間で割ると時給が出ます。
日給の人はその日の所定労働時間で割ってね。
(例)1日8時間
日給16,000円なら
時給は2,000円です!
月給制のみなし残業制を使った計算方法
みなし残業制は基本給と定額の残業代に分ける方法が一般的です。
そして、基本給に対して割増賃金を計算して定額の残業代に収まっていれば追加支給は無し、収まっていなければ追加で支払いが必要となります。
みなし残業制の場合
基本給24万円
定額の残業代6万円
合計の月給は30万円
所定労働時間数は160時間
何時間までが残業代に収まるかを計算して、残業代が6万円を超えていないかを計算します。
24万円÷160時間=1,500円
6万円÷1,500円=40時間分
この残業代6万円には40時間分の残業時間を含んでいます。
ちなみに、残業時間が40時間に満たない場合でも会社は6万円を支払う必要があります。
次に残業代を超えてしまった場合の計算を見てみましょう。
残業代超過の場合
基本給24万円
定額の残業代6万円
合計の月給は30万円
所定労働時間数は160時間
実際の残業時間は60時間だった場合の計算は下記です。
60時間×1,500円=90,000円
割増賃金は定額の6万円なので3万円不足します。
よって不足分の3万円を追加して支給し、基本給も合計します。
24万円+9万円=33万円
33万円が当月のお給料となります。
みなし残業制は超過したら、絶対に追加支給が必要です!
ちゃんと雇用契約書とか、タイムカードとか普段から確認してね。
ちなみに、ここでは1日8時間、1週間40時間を超えた分の計算をしましたが、割増賃金はこれだけではありません。
休日労働した場合の割増賃金と、深夜労働した場合の割増賃金があります。
それぞれ、おおまかなイメージは押さえておきましょう。
残業代の基本的なルールを知りたい方は、残業ルールのキホン 知っておくべきポイントを見てください。
休日労働の割増賃金の計算方法
休日労働の割増賃金も労働基準法に定めがあります。
実際の法律の条文を確認してみましょう。
労働基準法第37条第1項の政令で定める率は、・・・中略・・・延長した労働時間の労働については2割5分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については3割5分とする。
引用元:労働基準法第37条1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令
条文は小難しいのですが、簡単に表現すると休日労働は割増率が1.35倍となります。
計算の具体例を確認してみましょう。
休日労働
休日労働の割増賃金は、1週間で1日も休みがなかった場合に1.35倍で計算をします。
時給1,000円としたら、1,350円で計算をします。
休日労働の定義は1週間に1日も休みがない場合に、原則として最後の日が割増対象です。
(例)7連勤で働いた場合
日曜日 8時間労働
月曜日 9時間労働
火曜日 8時間労働
水曜日 10時間労働
木曜日 8時間労働
金曜日 9時間労働
土曜日 8時間労働 → この土曜日は1.35倍で計算をします。
厚生労働省による平成21年10月5日改正労働基準法に係る質疑応答というQ&Aにおいてこんな回答があります。
「法定休日が特定されていない場合で,暦週(日~土)の日曜日及び土曜日の両方に労働した場合は,当該暦週において後順に位置する土曜日における労働が法定休日労働となる。」
簡単に言うと、1週間の起算日が日曜日、7連勤目の土曜日が法定休日労働となり1.35倍になるということです。
日曜日起算で、7連チャンだったら1.35倍です!
ただ、就業規則に法定休日が定められていれば、そのルールに従います。
例えば「法定休日は日曜日である」と書いてあれば、日曜日に働くと1.35倍計算を行います。
法定休日の定めがあるか、就業規則を確認しましょう。
10人以上の会社は就業規則の作成が義務です!
深夜労働の割増賃金の計算方法
午後10時から午前5時までは2割5分増しで計算します。
深夜労働はコンビニのアルバイトなどでよく見ることがあります。
ご存じの方も多いと思いますが、この深夜労働の割増賃金も法令に基づいています。
使用者が、午後10時から午前5時まで・・・中略・・・の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用元:労働基準法第37条1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令
例えば時給1,000円で午後10時から午前2時まで働いたら、1,000円×1.25×4時間=5,000円となります。
深夜割増と時間外労働はプラスします。
深夜割増で2割5分増し、時間外労働で2割5分増しです。
例えば8時間を超えた時間帯が午後10時から午前5時の間だったら、合わせて5割増しなんです!
割増賃金の法改正の予定
先ほど1日8時間、1週間40時間を超えて働いた時間は1.25倍で計算すると書きましたが、2023年4月より中小企業は60時間を超えた場合1.5倍で計算をしなければなりません。
法改正の具体例
時給1,000円
1日8時間、1週間40時間を超えて労働時間が70時間ある場合
【法改正前】
①40時間 割増率は1.0倍
②30時間 割増率は1.25倍
①+②=70時間
【法改正後】
①40時間 割増率は1.0倍
②20時間 割増率は1.25倍
③10時間 割増率は1.5倍
①+②+③=70時間
70時間働いたらではなく、1日8時間、1週間40時間を超えて働いた時間が70時間の場合です。
ちなみに大企業はすでに施行されていて、今までは中小企業は猶予がありました。
深夜割増しと60時間超も合計します。
深夜割増しで2割5分増し、時間外労働60時間超で5割増しです。
合わせて7割5分増しなんです!
ブラック企業の残業代の実態を知りたい方は、【閲覧注意】ブラック社長ヤバい衝撃発言 全員管理職で残業代節約編を見てください。
【実録】ブラック社長のヤバい衝撃発言 まとめ
ブラック企業から自分の身を守るために、残業代の計算方法を知るのはとても重要です。
最後にもう一度、内容を確認しましょう。
まとめ
- 1日8時間、週40時間を超えたら割増賃金となる
- 月給制の場合は月給を月の所定労働時間で割ったものを1.25倍する
- 休日労働は1.35倍で計算する
- 時間外労働が60時間を超えたら1.5倍で計算するようになった
ブラック企業は残業代の違反をしているケースがほとんどなので、どのようなことが違反かを理解しておきましょう!
【実録】ブラック社長のヤバい衝撃発言に関するQ&A
1日8時間、1週間40時間を超えて労働したら割増率はどうなりますか?
時給あるいは時給相当分を1.25倍します。⇒詳しくはこちら
みなし残業はどのように計算しますか?
基本給と定額の残業代に分けて計算します。⇒詳しくはこちら
深夜労働は何時から何時までとなりますか?
午後10時から午前5時までが深夜労働です。⇒詳しくはこちら
この記事の監修者
社会保険労務士 タカハシ
顧問先100社を持つ社会保険労務士事務所の代表。
日々の労務相談の経験から、リアルなブラック企業の実態を知る。
ブラック企業を減らし、幸せな職場を増やすべく日々奮闘中。