この記事はブラック企業にお勤めで、なぜブラック企業がなくならないかと思っている方に向けて書きました。
ブラック企業の社長の本音はどんなことを考えているのか、実話を元に再現しました。
うちの事務所とお付き合いのある企業は素晴らしい会社が多いのですが、一部ブラックな状態を改善しようとしない企業もあります。
この記事を読めばなぜブラック企業が存在するのか、そしてその企業の将来がどうなるかを予測することが出来るようになります。
なかなか表に出てこない情報を知り、ブラック企業から身を守れるようになりましょう。
衝撃ブラック発言 残業時間は休憩で吸収できないかな?
顧問先になった会社から、給与計算の依頼がありました。
現状の働き方を確認し、今後行う計算方法をつめていきました。
というわけで、弊社の業務は不規則な勤務なんですよ。
なるほどですね。
御社の場合だと顧客に合わせて対応する事業なので、休憩時間も不規則になりそうですね。
そうなんですよ。
まあ、休憩時間は自由にしてもらっているので、労働時間には入れていないんですよね。
そうでしたか、そうすると残業時間はだいたい〇〇時間は追加で支払う見込みとなりますね。
事務所に帰って正確な計算をしようと思うのですが、スタッフの皆さんはざっくり〇〇時間は追加支払いの必要がありそうです。
え?そうなの?
おかしいな~。
そんなに残業時間はないと思うんだよね。
う~ん、1日8時間、1週間40時間を結構超過しているので、残業時間はそこそこありそうですね。
なにか、気になることがありますか?
いや、そういう訳ではないんだけど、そんなに追加支払いが必要なの?
休憩時間増やしてもだめ?
え?
といいますと?
残業時間は休憩で吸収できないかな?
・・・休憩で吸収ですか?
済みません、具体的なイメージでいうと、どういう感じですかね?
ウチの場合は休憩時間に何してもいいから、残業時間になる分を休憩時間にしてほしいんだよね。
残業時間が3時間あるなら、休憩時間を3時間増やすみたいな。
そうすれば8時間に収まるんじゃない?
いや、それはちょっと出来ないですね。
休憩時間って言っても手待ち時間など、待機が命じられている場合は労働になるんですよね。
待機の指示は出しているけど、スタッフは事務所で仮眠とったりしてるよ?
スマホゲームしてたりとかさ。
たしかに、会社から見たら遊んでいるように見えるかもしれないですが、会社の指揮命令が出ている時間は労働になるんですよ。
しかも休憩時間で吸収って、タイムカードの書き換えににもなってしまいますね。
法的に、かなりマズいです。
そうなのか。
でも残業代は払えないんだよね。
経営会議の時に人件費が増えたなんて報告したら、大変なんだよ。
会長から何を言われるか分からないよ。
う~ん、でも法律を守らないで業績良くするってどうなんでしょうね。
それって、長続きするんですかね?
きちんと法令を守ってこその業績の安定とも言えるんじゃないでしょうか?
・・・・・・・。
なんかうまい方法ないかな?
抜け道とか。
そうですね。
人件費を増やしたくないのであれば、残業代の支払いがそもそも必要ない状況を作るのが先決だと思います。
1日8時間、1週間40時間を超えた分が1.25倍で計算なので、出来るだけ超えないように時短、シフト組みの工夫としたほうが良いです。
具体的には、1日の勤務時間を長すぎないようにするとかですね。
それって、どうすればいいの?
はい、例えば1日8時間を超えないように業務量を見直すとかですね。
1日の労働時間が長いと、どうしても残業時間が増えてしまいます。
あとは連勤を避けるとか。
週6勤務だと残業時間はかなり増えるはずです。
なるほど。
最近だと、結構各社時短に取り組んでいます。
人材募集の時に有利ですし、定着率も上がるメリットもあります。
やっぱり長時間労働って従業員さんが辞めやすいんですよ。
そうなんですね、結局根本から改善しないとダメってことか。
まあ、やるだけやってみようかな。
そうですね、良い会社にするために、残業時間の削減を進めていきましょう。
経営的なメリットは大きいですよ!
ブラック企業がなくならない理由 業績至上主義
この会社は毎月、会長も参加する経営会議を行っていました。
会議の時業績を発表するのですが、なにか少しでも追加の支払いがあると、会長から徹底的に追及されるとのことでした。
なので社長も人件費の追加支払いがないようにしたい、といった意向でした。
たしかに会社を運営する上で業績は重要なのですが、法令をねじ曲げて業績を上げるというのは好ましくありません。
以前は法律の抜け道の相談が多くあり、またそういう抜け道を教えてくれる社会保険労務士の人気が高かった時代がありました。
ただ、最近は従業員さんも労働法に詳しい人も多く、スマホで簡単に法律を調べられます。
また労働基準監督署も対応してくれるようになり、法令順守がトレンドになりつつあります。
法令を遵守しながらの業績向上が、今後経営に求められることは間違いないでしょう。
あなたの会社が休憩を適当に扱っていないか、自社に当てはめてみましょう。
エマ先生、なんかゲームと勘違いしてそうな社長でしたね。
ズルしていい?とか、会社ではありえないですよね。
たしかにね~。
会長に怒られるから、従業員さんの残業代払わないって大人のすることじゃないかも。
なんか僕思うんですけど、社長さんって良くも悪くも人間って感じですね。
別に偉くもなんともない気がします。
尊敬できない社長はただの人って感じ。
まあ、社内の事情が色々あるんだろうけどね。
ただズルとか抜け道ばっかりしてると、ちゃんとやってる会社に追い抜かれちゃうんだよ。
法令順守してる会社は、工夫するのが必須になってくるから。
そうやって、ブラック企業は淘汰されていくんですね!
脱ブラック企業! 休憩の法的なルールは?
労働基準法には休憩の定めがあり、また休憩に関する判例もあるので大まかな内容は押さえておきましょう。
労働基準法にはこんな通達があります。
休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れていることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱う。
引用元:労働基準法 昭和22.9.13 発基第17号
条文は小難しいですが、簡単にいうと手待時間であっても拘束されていれば労働時間だよ、ということです。
なので何もしていないから、あるいは仮眠しているから休憩時間とは限らないんですね。
休憩時間の裁判例
すし処「杉」事件
客の途切れた時などを見計らって適宜休憩してよいが、客が来店した際には即時に対応を要するとされている時間について、手待時間であって休憩時間ではないとし、労働時間と算定し、割増賃金の支払いを命じた。
引用元:大阪地裁 昭56.3.24判決
日本貨物鉄道事件
手待時間中は、作業はしていないのであるが、「労働契約に基づき労働者を待機させておくことによって労働力を確保しているのであるから、労務の対価である賃金を支払ってしかるべきである。」と賃金の支払いを命じた。
引用元:東京地裁 平10.6.12判決
大星ビル管理事件
仮眠時間についても、労働からの解放が保障されていない限り、休憩時間には該当しないとされる。
引用元:最高裁第1小法廷 平14.2.28判決
これらのように、休憩とは指揮命令から完全に切り離された時間ということが分かります。
なにもしてないから休憩、とは限らないから。
気を付けて!
休憩時間の長さも定めあり!
労働基準法には休憩時間の長さも決められています。
使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
引用元:労働基準法34条
具体的には下記の通りとなります。
休憩時間の長さ
- 労働時間6時間 休憩なしでOK
- 労働時間7時間 → 休憩最低でも45分は必要
- 労働時間8時間 → 休憩最低でも45分は必要
- 労働時間9時間 → 休憩最低でも1時間は必要
このように、休憩時間には様々なルールが存在します。
あなたの会社が違法な休憩の扱いをしていないか、チェックしてみましょう。
衝撃ブラック発言 まとめ
ブラック企業から自分の身を守るために、休憩時間の法的な内容を知るのはとても重要です。
最後にもう一度、内容を確認しましょう。
まとめ
- 手待ち時間であっても休憩時間とは限らない
- 待機などの指揮命令があった場合は休憩時間ではなく労働時間である
- 労働時間が6時間を超えたら45分は休憩時間が必要
- 労働時間が8時間を超えたら60分は休憩時間が必要
ブラック社長のヤバい衝撃発言に関するQ&A
何もしていなければ休憩時間になりますか?
手待ち時間であっても休憩時間になる時があります。⇒詳しくはこちら
仮眠時間は休憩時間になりますか?
休憩時間とは限りません。⇒詳しくはこちら
休憩時間はどのくらいの長さが必要ですか?
6時間超で少なくとも45分、8時間超で少なくとも1時間は必要です。⇒詳しくはこちら
この記事の監修者
社会保険労務士 タカハシ
顧問先100社を持つ社会保険労務士事務所の代表。
日々の労務相談の経験から、リアルなブラック企業の実態を知る。
ブラック企業を減らし、幸せな職場を増やすべく日々奮闘中。