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残業ってそもそもなに?
残業代の計算方法ってどうすればいいの?
残業の相談窓口ってどこ?
「サービス残業って違法なの?」「そもそも残業ってどこから?」「毎日定時で帰りたいけど、仕事が終わらない…」
あなたは今、こんな悩みを抱えていませんか?
現代の日本では、長時間労働が社会問題となっており「働き方改革」が叫ばれています。
しかし、残業に関する法律やルールは複雑で、
〇自分のケースに当てはまるのかわからない
〇違法な残業をさせられているのか判断できない
〇正しい残業代の計算方法がわからない
といった声も多く聞かれます。
もしあなたが、今の働き方に少しでも疑問を感じているなら、残業に関する基礎知識を身につけることが重要です。
なぜなら、残業ルールを正しく理解することで、
サービス残業をなくし、正当な報酬を得ることができる
残業時間を減らし、プライベートの時間を充実させることができる
仕事とプライベートのバランスが取れた、より豊かな生活を送ることができる
といった未来が待っているからです。
私は労務管理に15年携わってますが、今までの経験を活かし、より具体的に分かりやすく残業の基本ルールをお伝えします。
この記事を読み終える頃には、あなたはもう「残業」に対して漠然とした不安を抱くことはなくなっているでしょう。
さあ、一緒に「残業」のモヤモヤをスッキリ解決し、理想的な働く環境を実現しましょう!
残業ってそんなに難しくないから大丈夫!
まずは大まかなところから、知識を深めていきましょう。
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残業の定義と基礎知識
「残業の定義と基礎知識」というテーマで、残業っていったい何なのかを考えてみましょう。
残業とは何か、残業時間とはいったい何時間で、どのように法律で決まっているのかを簡単に解説します。
さあ、早速学んでいきましょう!
残業時間の定義とは?
残業時間とは法的な用語ではありませんが、一般的には法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた時間のことを指します。
また、上記のような長時間の残業のほかに、深夜残業、休日労働も残業という言葉のカテゴリーに含まれます。
労働基準法では、労働者の健康と安全を守るために色々な法定労働時間が定められています。
労働基準法は労働者の健康を守るために、体を壊しやすい働き方には割増賃金を設けているの。
つまり、会社側に無理な働き方をさせないようなペナルティがあるんです!
具体的には、以下のように法定労働時間が規定されています。
〇労働時間の長さの制限:1日8時間、週40時間 → 超えたら残業となり割増賃金の対象
〇休日労働といった連勤数の多さの制限:原則として日曜日起算で7連勤目以降の労働 → 割増賃金の対象
〇深夜の勤務の制限:22:00~5:00の間の勤務 → 割増賃金の対象
エマ先生、具体的にはどんな時間の計算になるんですか?
そうだよね。
実際に事例を見ていこう!
例えば、ある企業で働くAさんの1日の労働時間が以下のようになっているとします。
始業9:00 ~ 終業18:00 (休憩12:00~13:00の1時間) → 実働8時間
Aさんは定時の18:00になっても仕事が終わらず、仕事を2時間延長しました。
18:00~20:00 → 仕事時間を2時間延長した
この場合、Aさんの労働時間は8時間だけでなく、追加で勤務時間を延長した18:00以降の2時間も働いたことになります。
残業時間の計算
8時間 + 2時間 = 10時間
法定労働時間の8時間を2時間超過 → 2時間の残業となり割増賃金の対象
この割増賃金はペナルティにあたるものなの。
つまり、1日8時間以上働くと体に負担がかかるから、なるべくそうならないように設けてあるんだよ。
なるほど。
なんか長時間働くと、お給料が増えるってイメージしかありませんでした。
法律の設定って、そんな意味が隠されていたんですね!
ちなみに1週間40時間も法律の制限なんだよ。
さっきと同じように、1週間40時間以上働くと体に負担がかかるってことなの。
早速、具体例を見てみよう!
Aさんが1日8時間働くとして、週に6日出勤すると週の労働時間は48時間となり、これを超える労働時間も残業時間となります。
1週間の曜日の起算は原則日曜日となります。
1週間40時間の計算
日曜日 お休み
月曜日 8時間労働
火曜日 8時間労働
水曜日 8時間労働
木曜日 8時間労働
金曜日 8時間労働
土曜日 8時間労働
1週間の労働時間は48時間
40時間を超えた分の8時間が割増賃金の対象
エマ先生、なんか残業時間とか割増賃金ってかなりシンプルですね。
割増賃金って、だいたいどのくらい増えるんですか?
長時間労働の場合は1.25倍だよ。
例えば時給1,000円だったら1,250円だね。
でも最近改正があって、あとで詳しく話すけど1.5倍パターンも出来たんだよ。
マジですか!
なんかすごい割増率ですね。
エマ先生、休日労働ってどんな感じなんですか?
そうだね、さっそく見てみよう!
例えば、Aさんは完全週休2日で、土曜日と日曜日が休みとします。
緊急な仕事が入って、本来は休みのはずの土曜日と日曜日を出勤したとします。
その場合、日曜日起算で7連勤目が割増賃金の対象となります。
休日労働の計算
日曜日 8時間労働
月曜日 8時間労働
火曜日 8時間労働
水曜日 8時間労働
木曜日 8時間労働
金曜日 8時間労働
土曜日 8時間労働 → 割増賃金の対象
土曜日が7連勤目となります。
あ~、なんか分かってきました。
でも、次の週も連チャン続いたらどうなるんですが?
次の週は毎日が割増賃金の対象になっちゃうんですかね?
そうはならないよ。
1週間ごとにカウントするから、1週間が終わったら一旦リセットされるの。
次の週は、また7連勤かどうかで判断するんだよ。
そうなんですね!
ちなみに割増率はどのくらいですか?
1.35倍だよ。
例えば時給1,000円だったら1,350円だね。
やっぱり、連勤が多いのは体に負担がかかるってことなんだよ。
たしかにそうですね。
休みでリフレッシュするからこそ、質の高い仕事が出来ると思います。
深夜労働も割増賃金の対象なんですよね?
てことは、深夜の労働も体の負担が大きいんですかね?
そうなんだよ。
深夜に働く人は病気になりやすいっていうデータもあるの。
具体例を見てみましょう。
深夜労働の事例
22:00~5:00までが深夜労働となり割増賃金の対象
例)Aさんが遅いシフトで14:00~23:00の勤務で実働8時間の場合
(休憩18:00~19:00の1時間)
22:00~23:00の1時間が割増賃金の対象
へ~。
なんか今までと違いますね。
深夜の時間帯に1時間でも働くと、即割増賃金なんですね。
そうなの。
ちなみに割増率は0.25倍をプラスになります。
時給1,000円だったら1,250円ね。
だから割増賃金は夜遅くまで残業させずに、早く退勤させる意図があるのよ。
朝方勤務って、ある意味合理的なんだろうね。
そういうことなんですね!
法律ってよく出来てますね。
なんか、偉い人が勝手に決めているイメージがありました。
あ、ちなみに長時間労働と深夜時間帯が重なったらどうなるんですか?
その場合は割増率を足して計算するんだよ。
実例を見てみましょう。
時間外労働と深夜労働が両方の場合
例)Aさんが遅いシフトで13:00~22:00の勤務で実働8時間の場合
(休憩17:00~18:00の1時間)
仕事が終わらなくて1時間延長、23:00まで勤務すると下記となります。
①22:00~23:00
9時間勤務したので8時間を1時間超過
→ 時間外で1.25倍
②22:00~23:00
22:00を1時間超過
→ 深夜労働で0.25倍
①+②=1.5倍
22:00~23:00は1.5倍の割増率で計算
1.5倍ってすごい割増率ですね!
これってある意味、相当身体に悪いんでしょうね。
そうなの。
実際に過労死してしまう事例は長時間労働に深夜労働が重なって・・・というケースがとても多いんだよね。
そうなんですね。
あれ?休日労働ってたしか1.35倍ですよね。
これは加算するんですか?
深夜とは加算するんだよ。
この辺りはちょっと複雑なんだけど、簡単に言うと長時間カテゴリーと深夜カテゴリーで違うカテゴリーは足す、同じカテゴリーは高い方を取るんだよ。
・・・エマ先生、ちょっと言っている意味が分かりません。
ちょっと難しいよね。
下に整理したので、一緒にみてみよう。
時間外、休日、深夜労働まとめ
【長時間労働カテゴリー】
①8時間を超えた場合の1.25倍
②7連勤した場合の1.35倍
【深夜カテゴリー】
③22:00~5:00に勤務した場合の0.25倍
上記が重なった場合は下記となります。
①+③=1.5倍
②+③=1.6倍
①+②=1.35倍 → 同カテゴリーは足さない
・・・なんか分かったような、分からないような。
結局どういうことなんですかね?
計算式で見るより、具体的な場面で考えた方が頭に入りやすいの。
例えば長時間カテゴリーは8時間を超えて長く働いた場合、疲労が溜まるよね。
たしかにそうですね。
長く働くと、最後の方は頭がボーっとしてきます。
一方で連チャンが続くと、同じく疲れがたまるよね。
ホントそうです。
もう、朝起きるのがつらくなります。
そうだよね。
つまりこのカテゴリーは長時間労働抑制の割増率になるの。
ただ、もし重なった場合は高い方をとる。
1.35倍ね。
は~。
なんか分かってきました。
てことは、深夜は1時間働いただけでも割増になるから、深夜労働自体を抑制するのが目的ですね?
そうそう、そうなの!
深夜に働くってことは、疲労もあるけど病気になりやすい時間帯なの。
だからまとめると、抑制目的が違うものは足して計算するっていうこと。
なるほど!
言い換えると、連チャンが続いて深夜時間帯に及ぶ労働って相当ヤバいってことですね?
そういうことだね。
割増率MAXの1.6倍だもんね。
相当身体に負担がかかるから、極力避けて欲しい働き方なんだね。
だから自分の勤務時間数とか、時間帯を振り返って把握するっていうのはとても大切なことなの。
自分の健康に直接かかわってくることだからね。
はあ~、なんかスッキリしました。
法律って奥が深いな~。
ホント、労働と健康って密接に結びついているんですね!
法定労働時間と所定労働時間とは?
法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限であり、1日8時間、週40時間です。
一方で所定労働時間とは、会社が就業規則に定めた労働時間のことを指します。
例えば、ある企業の就業規則に以下のような労働時間が定められているとします。
所定労働時間:9:00~17:00(休憩1時間を含む)
この場合、所定労働時間は1日7時間(9:00~17:00のうち休憩1時間を除く)となります。
整理すると下記です。
法定労働時間
1日8時間まで
1週間40時間まで
所定労働時間
【就業規則に明記】
始業 9:00
就業 17:00
休憩時間 12:00~13:00
1日7時間が所定労働時間
エマ先生、所定労働時間って会社が決められるんでしたっけ?
そうだね、会社が所定を決められます。
ただ、労働基準法には制限があるの。
所定労働時間は法定労働時間を超えてはいけないの。
へ?
ど、どういう意味ですか?
所定・・・法定?
法律って漢字が多いから難しく感じるよね。
簡単に言うと、「ウチは所定労働時間は12時間だから働け働け~」っていうのは出来ないの。
決めるなら1日8時間までになるんだよ。
あ~、なるほど。
法定労働時間の範囲内で、会社の裁量で決めなさいってことですね。
そうなの。
だからブラック企業で「ウチは所定労働時間は12時間だ!」って言っても、違反になるの。
労働基準法の条文を見てみましょう。
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
引用元:労働基準法第13条
条文はちょっと難しいけど、8時間を超えている場合は無効っていう意味なの。
無効になった部分は労働基準法の基準が置き換わるってことね。
「基準に達しない~」という表現は「基準を破っている~」と読み替えてOKです。
なるほど。
法律って読めるようになると、なんか親近感を覚えます。
そうだよね。
ちなみに計算は法定労働時間を超えていなければ、割増の必要はないの。
あ~。
さっきやった1.25倍とか1.35倍ってやつですよね。
そうそう。
8時間を超えていなければ1.0倍でOKです。
具体的に見てみましょう。
所定労働時間を超えた場合
(例)所定労働時間 9:00~17:00
休憩時間 12:00~13:00
所定労働時間数は7時間
この場合、もし仕事が終わらなくて18:00まで勤務した場合
17:00~18:00は1.25倍などの割増率はなし
ただし、1.0倍を支払う必要はあり
エマ先生、なんか残業ってワード、実はいろんな種類があるんですね。
そうなのよ。
残業ってあいまいな表現なんだよね。
法定労働時間8時間を超えた部分を言うこともあれば、所定労働時間を超えた部分も残業って一般的に言うよね。
ホントですね。
今まで考えたこともありませんでした。
エマ先生、所定労働時間を超えたら超えた分も支払いが必要なんですね。
僕の前の会社、定時過ぎても払ってくれませんでした。
いわゆるサビ残ってやつね。
例えば定時は17時なんだけど、片付けとかで17:40分に退勤とかあるよね。
その場合40分の支払いが必要ね。
8時間を超えていれば1.25倍になります。
前の会社なんか8時間を超えても残業代ありませんでした。
成果を出した時間しか計上しないとか言って。
マジでブラック企業でしたよ!
それはひどいね。
そもそも1日8時間、1週間40時間といった法定労働時間を超えて働くのって法律違反なんだよ。
え?
そうなんですか?
でも、いろんな会社で超えていますよね。
そうだよね。
ただ本来は超えて労働するのは禁止なの。
でも事業の都合上どうしても法定労働時間を超えてしまう場合は、
会社と労働者代表で協定を結ばなくてはならないの。
そうなんですか!
なんか、社長が働け!って言ったらやらなきゃいけないって思ってました。
今まで見てきたように、長時間労働とかって悪影響が多いんだよね。
だから会社側と労働者側できちんと話し合って、どの位残業するかっていうのを事前に決めておく必要があるの。
これを通称36協定(サブロク協定)って言います。
あ、なんか聞いたことあります。
たしか36って法律の番号なんでしたっけ?
よく知ってるのね!
そうそう、労働基準法36条に定められているの。
だから36協定(サブロク協定)っていうのよ。
条文を見てみましょう。
使用者は、当該事業場に ~ 中略 ~ 労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては ~ 中略 ~ その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
引用元:労働基準法第36条
なんか条文は小難しいけど、なんとなく意味は分かります。
要は書面の協定を結んで届け出れば、時間延長OKって感じですね。
そうそう、その通り。
ちなみに届け出る行政官庁は労働基準監督署ね。
それでは、さっそく36協定の詳しい内容を次の章でみてみましょう。
はい、よろしくお願いします!
36協定と残業の深い関係
36協定とは?
36協定(サブロクきょうてい)とは、労働基準法第36条に基づき、会社が労働者に法定労働時間を超えて労働させるために必要な労使協定のことです。
この協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、会社は法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を合法的に行うことができます。
労働基準法第36条は、労働者の健康と安全を守るために、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働を原則として禁止しています。
36協定って労使協定と呼ばれることがあります。
「労」働者と「使」用者、つまり従業員さんと会社で協定を結ぶって言う意味です。
ちなみに労使協定は36協定以外にも、色々な種類があります。
変形労働時間制に関する労使協定、事業場外のみなし労働制についての労使協定など。
しかし、業務の必要性からどうしても残業や休日労働が必要な場合があります。
そこで、労使間で協定を結び、労働基準監督署に届け出ることで、法定労働時間を超える労働が認められる仕組みが36協定です。
例えば、ある製造業の企業が繁忙期に対応するために、法定労働時間を超えて労働者に残業をお願いする必要があるとします。
この場合、企業は以下の手順を踏む必要があります。
労使協定の締結
労働者の代表と会社が協議し、残業や休日労働の条件を定めた協定を書面で締結します。
協定には、法定労働時間を超えた残業時間の上限や休日労働の具体的な条件が明記されます。
労働者の代表は、実は結構ルールがあるんです。
誰でもなれるわけではないの。
そうなんですね!
具体的にどんなルールがあるんですか?
労働者の代表は過半数の代表であることが必要なの。
例えば労働者4人の会社だったら3人以上のリーダーである必要があります。
過半数は半分ではなくて、半分を超えること。
8人だったら5人とかね。
あ~、なるほど。
「オレがやる!」って言いだして勝手に代表になれるわけではないんですね。
でもリーダーってどうやって決めるんですか?
そうそう、決め方は民主的な方法を使用します。
話し合い、投票、挙手で決めるなど。
会社が「Aさんを指名する!」とかは出来ないの。
会社側が決められないんですか?
ちょっと意外です。
それは何故ですか?
36協定はあくまで労働者と使用者の協定なの。
労働者代表を会社が選ぶと会社側と結託している可能性があるんだよ。
最初から出来レースみたいな。
それは健全ではないですね。
そうか、労使で対等な立場で話し合うためのルールなんですね。
そうなの。
ちなみに労働者代表に管理監督者はなれません。
はいはい、分かります。
管理監督者っていかにも会社とつながってそうですよね。
社長とグルになってるみたいな。
そうだね。
やはり長時間労働は健康に害があるから、ちゃんと労使で話し合う必要があるということだね。
労働基準監督署への届け出
締結した36協定を労働基準監督署に届け出ます。
届け出先は各事業場ごとに最寄りの労働基準監督署に届け出ます。
労働基準監督署への届け出
(例)飲食店3店舗を運営している会社の場合
台東区の店舗 → 上野労働基準監督署
さいたま市の店舗 →さいたま労働基準監督署
厚木市の店舗 → 厚木労働基準監督署
エマ先生、それぞれの最寄りの労働基準監督署って行くの大変ですね。
最近は労働基準監督署の窓口に行く以外に、郵送と電子申請も出来るようになったの。
結構便利になったんだよ。
そうなんですか!
時代は進歩しているんですね。
36協定って届け出をしないとヤバいんですか?
そうなの。
届け出は必須です。
届出しないと6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金があるの。
うわー、なんかヤバそうですね!
でも労働基準監督署っていろんな会社から36協定が来るんですよね。
ぶっちゃけ内容見てるんですか?
それが見てるのよ。
労働基準監督署の巡回調査ってのがあるんだけど、36協定の内容でどの会社にいくか決めることがあるんだよ。
ひゃ~。
それじゃ内容もちゃんと話し合って決めないとマズいですね。
そうなのよ。
でも複数店舗を運営している会社で、36協定の詳しい説明をせずに各店の労働者代表に「とりあえずハンコを押せ」なんて事例もあるの。
それ、マジでブラック企業っスね。
なんで、そうなっちゃうんでしょう?
そういう会社は働く人を軽んじているとしか思えないよね。
届け出内容にも、そういうのって出るんだよ。
一事が万事、ってことかな。
36協定の限度時間
36協定の限度時間とは労働基準法に基づき、会社が労働者に法定労働時間を超えて労働させる際に設定される残業時間の上限のことです。
残業時間の上限は月45時間、年360時間となり、これを超える残業は原則禁止となります。
エマ先生、もうすでに訳分からないんですけど。
限度時間がなんちゃらって・・・。
そうだよね。
なんかこの辺りの話って、小難しいんだよ。
まず大まかに言うと、1日8時間、1週間40時間を超えていい時間にも限度があるってことなの。
あ~、さっきやったやつですね。
たしかに限度が無いと、ブラック企業は「青天井で働け~」ってなりそうですよね。
そうなの。
だから上限を定めているんだよ。
でもコタロウ、月45時間、年360時間って意味わかる?
え~と、例えば1日8時間、1週間で40時間を超えた時間のトータルが月45時間以内でなきゃダメなんですよね。
同様に年間では360時間以内じゃなきゃダメ、ってことですか?
そうそう、正解!
そしてこれらの数字って、実は意味があるんだよ。
そうなんですね。
たしかに個人的に、なんで月間45時間、年間360時間なんだろうって思いました。
月間45時間なら単純に12倍して年間540時間にすればいいのでは?って気がします。
あ、1日あたりの限度時間は何時間ですか?
1日あたりの限度時間は決まってないのよ。
・・・・・・。
エマ先生、もう意味不明です。
いったい、どういう意味があるんですか?
フフフ、そうだよね。
これは結論を先に言うと、繁閑に対応している意味があるの。
例えば1日8時間、1週間で40時間を超えた時間が45時間ギリギリだったとして、それを毎月繰り返しちゃダメってことなの。
下に整理したので見てみましょう。
36協定の限度時間
【1か月あたり45時間が限度】
毎月だと年間360時間を超えてしまうので、調整が必要!
4月 時間外労働20時間
5月 時間外労働30時間
6月 時間外労働30時間
7月 時間外労働45時間
8月 時間外労働45時間
9月 時間外労働45時間
10月 時間外労働30時間
11月 時間外労働30時間
12月 時間外労働20時間
1月 時間外労働20時間
2月 時間外労働20時間
3月 時間外労働15時間
年間350時間となり限度時間クリア
なるほど!
例えば夏が繁忙期の会社は、こんな感じになるんでしょうね。
そうなの。
ちなみに1日あたりの限度時間が決まっていないのも、繁閑に対応するためと言われてるんだよ。
緊急の納期があって・・・とか。
そういうことなんですね。
なんか、めっちゃスッキリしました。
ってことは、会社では月間平均で30時間位の時間外労働で運営する必要があるんですね。
そのとおり!
そして、これらの内容を事前に会社側と労働者側で話し合って協定しよう、ということだね。
分かりました!
限度時間の上限を超えられる場合もある
臨時的で特別の事情がある場合は、会社は月45時間、年間360時間の時間外労働の上限を超えることが可能です。
これは特別条項といって、36協定に盛り込むと上限を超えた協定の作成が可能となります。
ただし、これには厳格な条件と制限があり、労働者の健康を守るための措置が求められます。
エマ先生、またややこしそうなのが出てきましたね。
まあ、そうだね。
ただ内容自体はすごくシンプルなんだよ。
ある条件を守れば限度時間を超えられる、ただし青天井ではないってことなの。
は~。
たしかに、会社もトラブルとかで予想外の時間外労働とかありそうですもんね。
ある条件ってなんなんですか?
下記にまとめたので、見てみましょう。
特別条項の条件
- 1ヶ月の時間外と休日労働は100時間未満
- 2~6ヶ月の時間外と休日労働は平均月80時間以内
- 年間の時間外労働は720時間以内
- 45時間の時間外を超えるのは年6か⽉まで
う~ん。
なんかイマイチ分からないですね。
どんな状況なのかイメージできません・・・。
そうだよね。
このあたりって具体例が無いと分かりづらいの。
早速みてみましょう。
特別条項ありの具体例
【1か月100時間未満!】
4月 時間外労働30時間
5月 時間外労働30時間
6月 時間外労働40時間
7月 時間外労働40時間
8月 時間外労働45時間
9月 時間外労働45時間
10月 時間外労働80時間(1)
11月 時間外労働80時間(2)
12月 時間外労働80時間(3)
1月 時間外労働80時間(4)
2月 時間外労働80時間(5)
3月 時間外労働70時間(6)
年間700時間となり特別条項クリア
上記は1か月の時間外労働が100時間未満になっているのでOK。
10月から3月までの6ヵ月はキツいけど、2~6ヶ月の平均は80時間以内でクリア。
年間では720時間以内、1か月45時間超えも6回なのでセーフ。
なるほど、そんな風に見るんですね。
とてもイメージしやすくなりました。
でもエマ先生、これって臨時とか特別な事情がないとダメなんですよね?
そうなんだよ。
厚生労働省パンフレットの事例としては「予算・決算業務」「ボーナス商戦に伴う業務の繁忙」「納期のひっ迫」「大規模なクレームへの対応」「機械のトラブルへの対応」なんかが挙げられているね。
そっか、たしかにいつも特別条項の長時間労働になってしまうと、体壊しそうですもんね。
そうなの。
さっき出てきた1ヶ月100時間未満、2~6ヶ月平均で月80時間以内っていう数字も意味があるんだよ。
なんか法律って、だいたい意味があるんですよね。
ある意味当たり前だけど、知るとすごく親近感がわきます。
ホント、そうだよね。
厚生労働省からの通達をみてみましょう。
「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」
●1週間当たり40時間を超える労働時間が⽉45時間を超えて⻑くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされていること
●さらに、1週間当たり40時間を超える労働時間が⽉100時間⼜は2〜6か⽉平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていること
引用元:平成13年12⽉12⽇付け基発第1063号厚⽣労働省労働基準局⻑通達
これって、いわゆる過労死認定基準っていわれてるの。
過労死って多くが脳と心臓に症状が出るから、そうならないように労働時間を抑えましょうってことなのよ。
そういう背景があったんですね~。
36協定で多くの働く人の命が守られているのかも知れませんね。
まさにそうなの!
元気に働けるっていうのは、本来会社、労働者双方にプラスなんだよね。
残業の基本知識として押さえておきましょう!
はい、しっかり押さえておきます!
36協定の締結方法と様式記載例
最後に36協定の締結方法と書類の記入例を確認します。
最後に36協定の書き方例を見てみましょう。
1日、1週間、1年で時間外労働をどのくらい実施するか記載します。
エマ先生、36協定って書くことがいっぱいあるんですね!
また、延長していい場面を限定して書くんですね。
そうなの。
事例では「受注の集中」、「製品不具合への対応」、「臨時の受注・納期変更」とかになってるね。
長時間労働が常態化してはダメって意味もあるのよ。
なるほど~。
36協定を記入したら会社側と労働者側で署名するんですよね?
そうなんだよね。
書類の下の方に署名欄があるの。
署名するからには、会社側と労働者側でしっかり話し合って決めて欲しいね!
そして労働基準監督署に提出して、効力が発生します。
よく分かりました!
残業のメリット・デメリット
残業時間が長くなる原因
残業時間が長くなる原因は多岐にわたりますが、主な要因としては業務量の過多、業務の非効率性、労働環境の問題、そして管理体制の欠如が挙げられます。
これらの要因が複合的に作用することで、労働者の残業時間が増加し、結果として労働者の健康に悪影響を及ぼすことがあります。
そもそも、なぜ残業時間が長くなるか事例をあげました。
多くの場合、会社の運営方法が深くかかわっています!
業務量が多すぎる
業務量が過剰である場合、労働者は定時内に業務を完了することが難しくなり、結果として残業が増加します。
特に繁忙期やプロジェクトの締め切りが迫っている場合に顕著です。
業務の効率が悪い
業務プロセスが非効率である場合、労働者は無駄な時間を費やすことになり残業が増加します。
例えば手作業が多い、システムが古い、情報共有が不十分などが原因となります。
労働環境の問題
労働環境が整っていない場合、労働者はストレスを感じやすくなり業務効率が低下します。
これにより、業務が長引き残業が増加します。
例えば職場の人間関係が悪い、設備が不十分などが挙げられます。
企業文化や管理体制がダメ
残業が当たり前とされる企業文化や、適切な労務管理が行われていない場合、労働者は長時間労働を強いられることがあります。
特に上司が残業を奨励する場合や、労働時間の管理が不十分な場合に発生します。
システムが古い、設備が不十分、上司が残業を奨励とかってマジ勘弁です。
ブラック企業って呼ばれても知りませんよ!
ブラック企業の具体的な特徴を知りたい方は、【決定版】ブラック企業の特徴8選|偏差値80~50までを見てください。
残業のメリットとデメリット
残業は会社と労働者双方に多くの影響を与えます。
会社は残業のメリットとデメリットをバランスよく考慮し、適切な対策を講じることが求められます。
残業のメリット:顧客満足の獲得
繁忙期や緊急対応が必要な場合、残業をすることにより顧客の期待に応えられて顧客満足を獲得することが出来ます。
また、リピートが期待出来て「あそこは緊急でもやってくれる」といった信頼を獲得する可能性もあります。
残業のメリット:給与額のアップ
労働者が残業をすると割増賃金が増え、結果的に給与額がアップします。
デメリット
残業のデメリット:労働者の健康に害がある
長時間労働は過労死や過労自殺のリスクを高めることが様々な研究で報告されています。
残業の常態化により肉体的、精神的な病気が増え労働者の健康が害されます。
残業のデメリット:ワークライフバランスの悪化
残業により労働者は仕事と私生活のバランスを取るのが難しくなります。
プライベートや家族と過ごす時間が減り、労働者の人生の幸福感が阻害されます。
残業のデメリット:生産性向上の機会を損失
残業が常態化すると、会社は「なにかあったら残業で」という考えに陥りやすくなります。
これにより業務プロセスの見直し、ITシステムの導入など本来やるべきタスクから遠ざかります。
また、残業代の支払いが多くなるので残業代不払いの温床になる可能性があります。
残業をゼロにはできないけど、残業の常態化はデメリットが多いんです。
会社のトップが残業を推奨している場合、転職を考えた方が良いかも知れません!
転職って実際にやるとなると、ちょっとハードルがあるんですよね。
転職エージェント登録とか、転職サイト見るとかでしょうか?
そうだよね。
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残業代の計算方法
労働時間の適正な把握
労働時間の適正な把握は労働者の健康を守り、正確な残業代を支給するために必要不可欠です。
適正な労働時間管理は、労働基準法の遵守だけでなく、労働者のモチベーション向上や生産性の向上にも寄与します。
中小企業では労働時間の管理をしていないケースがとても多いの。
管理がしっかりしている会社の事例を見てみましょう!
実例1:タイムカードの導入
ある製造業の中小企業では従業員の出退勤時間を手書きで記録していたため、労働時間の正確な把握が困難でした。
タイムカードを導入した結果労働時間の記録が正確になり、残業代の計算も適正に行われるようになりました。
【対策】タイムカードの導入を検討する。
実例2:勤怠管理システムの活用
IT企業では、リモートワークの普及に伴い、従業員の労働時間管理が課題となっていました。
クラウドベースの勤怠管理システムを導入し、リモートワーク中の労働時間も正確に把握できるようになりました。
【対策】クラウドベースの勤怠管理システムを導入し、リモートワークにも対応する。
実例3:労働時間の見える化
サービス業の企業では従業員の労働時間が長時間化していることが問題となっていました。
労働時間の見える化を図るために月次で労働時間の集計と報告を行い、長時間労働の是正に取り組みました。
【対策】労働時間を集計し、現状で長時間労働がどのくらいかを把握する。
なんか、そんなに特殊なことはやってないですよね。
最近は無料のスマホ勤怠アプリとかあるし、会社のやる気次第なんじゃないかな。
残業代の計算方法
残業代の計算は労働基準法に基づいて行われ、正確な計算と支払いは使用者の義務です。
働く時間帯や労働時間数によって割増率が変わります。
労働基準法第に基づく残業代の計算方法は以下の通りです。
残業の割増率
- 法定時間外労働:通常の賃金の1.25倍以上の割増
- 法定休日労働:通常の賃金の1.35倍以上の割増
- 深夜労働(22:00から5:00):通常の賃金の0.25倍以上の割増
実際の計算例を見てみましょう。
計算例は月給だけど、分かりやすさ優先で簡単にしてあります。
月の所定労働日数は20日として計算です。
実例: 残業代計算の具体例
基本給が月給30万円、所定労働時間が1日8時間、月20日勤務の場合
・時間単価の計算 300,000円 ÷ (8時間 × 20日) = 1,875円/時間
・法定時間外の労働(1.25倍): 1,875円 × 1.25 = 2,343.75円/時間
・休日労働(1.35倍): 1,875円 × 1.35 = 2,531.25円/時間
・深夜残業(0.25倍): 1,875円 × 0.25 = 468.75円/時間
所定労働日数や所定労働時間数は、実際は平均を使います。
上記の例は簡単な計算例です。
次は実際に実務上計算する方法も見てみましょう!
給与形態別の残業代
主な給与形態として、月給制、日給制、時給制、それぞれに適した残業代計算方法があります。
実例:月給制
月間の所定労働日数や所定労働時間数は月によって変わるため年間の平均を計算します。
・月給336,000円
・1日の所定労働時間数8時間
・年間休日日数113日の場合
365日-113日=252日
252日÷12ヵ月=21日
21日×8時間=168時間
平均した月間所定労働日数 21日
平均した月間所定労働時間数 168時間
336,000円÷168時間=2,000円(時間単価)
時間外労働2時間の場合 2,000×1.25×2=5,000円/時間
エマ先生、なんで月給制は平均した日数を使うんですか?
月の日数って月ごとに代わるから、計算する月によって有利不利があるんだよ。
それだと不公平だから実務上は平均を使うのが一般的なの。
なるほど。
スッキリ解決しました!
実例:日給制
日給制は1日の所定労働時間数に対して計算します。
・日給20,000円
・1日の所定労働時間数8時間
20,000円÷8時間=2,500円(時間単価)
時間外労働2時間の場合 2,500×1.25×2=6,250円
具体的な例を見るとよくわかりますね!
月給は平均した所定労働日数とかを使って、日給は1日の労働時間数で割って計算ですね。
そうそう、その通りです。
時給制はそのままの時給に1.25倍とか計算すればOKです。
正確に計算できなくても、大まかに分かっていれば適正に残業代が払われているか分かるよね!
たしかにそうですね!
とくに残業が多い方は正社員で月給制が多いから、ちゃんと確認したほうがいいですね。
残業代の不払いのよくある例
残業代の不払いは、多くの企業で発生している深刻な労務問題です。
主な原因は労働時間管理の不備、法律の理解不足、そして経営側の意識の低さにあります。
暗黙のサービス残業の強要
労働時間とは会社の指揮命令がある場合、労働時間とカウントします。
たとえば、それがノルマ達成の為に必要な場合は間接的に指揮命令があると判断します。
例: 営業職の従業員に対し、顧客との接待時間を労働時間として認めない。
固定残業代制度(みなし残業制)の誤った運用
固定残業代制度(みなし残業制)は定額で残業代を払う制度で、金額に見合う残業時間が設定されています。
残業時間が多く、毎月の金額を超過する場合は追加で支払いが必要です。
例: 実際の残業時間が固定残業代の対象時間を超えているにも関わらず、追加支払いをしない。
管理監督者の範囲の拡大解釈
管理監督者は出勤時間に左右されない、人事権を持っていて給与額も高い方が対象とされます。
会社でいう取締役的な方を指すので、一般社員を管理監督者とするのは解釈を拡大し過ぎです。
例: 一般の社員を管理職として扱い、残業代を支払わない。
労働時間の過小申告の強要
通常の業務をこなすのに必要な時間が労働時間となります。
成果が出なかったから、会社が厳しいから労働時間ではないといった身勝手な理由は認められません。
例: 予算の都合で残業時間の上限を設け、実際の労働時間を報告させない。
休憩時間中の労働
休憩中であっても会社から指揮命令があれば労働時間となります。
「休憩中電話が来たら出て」「休憩中お客さん来たら対応して」というのは労働時間にあたります。
例: 休憩時間中の電話対応や来客対応を労働時間としてカウントしない。
エマ先生、これらマジでブラック企業っスね。
ありえなくないですか?
ありえないよね。
こういう会社って人がすぐ辞めるから、人手不足の場合も多いんだよ。
働く側は冷静に、客観的に会社を見ないとね!
残業代を払わない具体的な事例を知りたい方は、【実録】ブラック社長のヤバい衝撃発言 残業時間は休憩で吸収編を見てください。
残業に関する労働基準法改正の内容
残業代の請求権の時効が2年から3年に延長
労働基準法が改正され、残業代の請求権の時効が2年から3年に延長されました。
元々民法の改正があったのですが、労働基準法も影響を受ける形となりました。
2020年4月1日以降の期間から3年となり、労働者側から見るとより多くの残業代請求が可能となりました。
月60時間を超える時間外労働の割増率アップ
2023年4月1日より月間60時間を超える時間外労働の割増賃金が引き上げられました。
以前は大企業のみでしたが、現在は中小企業にも適用されています。
60時間以下 | 60時間超 | |
時間外労働 | 1.25倍 | 1.5倍 |
割増率はさっきやったように、深夜労働と加算されます!
具体的に見てみましょう。
60時間以下 | 60時間以下 | |
時間外労働 | 1.25倍 | 1.5倍 |
時間外と深夜労働が重なった | 1.5倍 | 1.75倍 |
より働く人の健康が守られるようになったんですね!
残業に関する注意点や相談窓口
違反した場合の罰則
残業ルールを違反した場合、会社は労働基準法に基づき罰則を受ける可能性があります。
是正勧告、罰金や懲役があり、会社の信頼性に大きな影響を与えることがあります。
是正勧告
労働基準監督署が会社内の調査を行い、法令違反をしていたら違反を是正するように指導されます。
その場合違反を列挙した書面を出されるのが一般的で、この書面を是正勧告書といいます。
下記のように具体的に労働基準法の、どの箇所に違反しているかが記載されます。
【記載例】
〇〇条違反 割増賃金を支払っておらず~
■■条違反 賃金台帳の保管がなされておらず~
また、改善の期限も設定されており、即時改善を求めるものから1週間から2週間以内に設定されるケースが多くあります。
エマ先生、是正勧告を受けると罰金、懲役になるんですか?
いや、急にはならないよ。
是正勧告を受けてちゃんと改善すれば、そこで指導は終了するの。
でも労働基準監督官のいうことを聞かないと・・・
やられちゃう訳ですね!
不謹慎かもしれないけど、悪者にはきちんと罰を受けて欲しいです。
たしかに、働いている従業員んさんのことを考えると違反にはペナルティが必要だね。
具体的にみていきましょう。
罰金
労働基準法違反に対しては罰金が科されることがあります。
労働基準監督署の指導に従わない場合、検察へ書類を送検します。
刑事事件として送検された場合、罰金を適用される可能性があります。
割増賃金や賃金の不払いは30万円以下の罰金となります。
懲役
労働基準法違反に対しては懲役が科される可能性があります。
ただ、実際は執行猶予が付くことが多く罰金のみで済むケースがあります。
割増賃金の不払いは6ヵ月以下の懲役となります。
近年は送検された会社名を厚生労働省のHPで公表しているの。
じつはこれが一番会社に影響があるかも。
公表制度
重大な違反があったり、指導に従わなくて送検された会社の名前が公表されています。
1年ごとに更新され、厚生労働省のホームページで見ることが可能です。
また会社名だけでなく住所も細かく掲載されているため影響が大きく、風評被害や取引停止など大きな問題に発展することがあります。
公表されているブラック企業名を知りたい方は、厚労省が公表!法令違反のブラック企業リストを見てください。
残業代を請求しようと思ったら
もし残業代を請求する際、労働時間や残業の指示があったことを証明する証拠が不可欠です。
日頃から証拠となる資料を保管しておくなど、いざという時のために備えておくことが重要です。
エマ先生、実際に残業代を会社に請求するのって可能なんですか?
そうだね、可能だよ。
ただ、残業代請求は労働基準監督署に相談するのが一般的なんだけど注意点がいくつかあるの。
そうなんですね。
どんな注意点があるんですか?
まず労働基準監督署は労働基準法を中心に管轄してるんだよ。
だから、パワハラとかセクハラも含めて相談っていうのは難しいのよ。
なるほど!
労働問題もいろんな種類があって、労働基準監督署の守備範囲が決まってるんですね。
ほかには何かありますか?
書面で証拠を残しておくこと。
口頭でいくら説明しても労働基準監督署は動いてくれません。
もともと残業代の計算はタイムカード、就業規則、雇用契約書といった書類を使うの。
そうか、つまり計算ができる資料が無いと労働基準監督署も判断つかないってことですね。
どんな書類が必要なんでしょうか?
出退勤を記録したもの、またはそれに準ずるものが必要です。
具体的にみてみましょう。
資料 | 証明できる内容 | 補足 |
---|---|---|
タイムカード、ICカード記録 | 始業・終業時刻、労働時間 | 客観的な記録として有力な証拠となる |
パソコンのログ情報 | パソコンの使用時間、作業内容 | 作業時間や業務内容を客観的に示す証拠となる |
メールの送受信履歴 | 業務連絡の時間帯、残業の指示内容 | 時間外に業務指示や報告を求められていたことを証明できる |
業務日報、報告書 | 1日の業務内容、労働時間 | 具体的な業務内容と時間外労働の関連性を示す証拠となる |
出退勤記録のメモ | 始業・終業時刻、残業時間 | 自己申告ではなく、毎日記録していた場合は一定の証拠能力を持つ |
上司や同僚の証言 | 残業の指示内容、労働時間 | 第三者の証言は、客観性を担保する上で重要となる |
こう見てみると結構証拠って集まりそうですね!
そうだね。
ただ残業代請求は3年が時効だから、請求するときは早めに手続きをするのがおすすめね。
分かりました!
残業代の未払いで困ったときの相談先
残業代の未払いは労働者の正当な権利を侵害する問題です。
一人で抱え込まず専門機関に相談することで、問題解決への糸口を見つけることができます。
各専門機関は秘密は厳守されますので、安心して相談してください。
労働基準監督署
労働基準法などの法令に基づき、労働条件の改善指導などを行う行政機関です。
割増賃金の支払い、長時間労働など労働基準法関連だったらまずは労働基準監督署に相談してみましょう。
相談は無料です。
総合労働相談コーナー
各都道府県の労働局に設置されており、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としています。
自分の抱えている労働問題がどんなカテゴリーに入るか分からない場合は、まずは総合労働相談コーナーに相談してみましょう。
面談か電話で対応、無料で相談できます。
法テラス(日本司法支援センター)
法テラスと契約している弁護士の無料法律相談があります。
無料法律相談は所得など一定の条件を満たす必要があります。
労働組合
労働者の権利を守るために会社と団体交渉などを行う組織 です。
労働組合がない会社に勤務していても、ユニオンといった外部の労働組合に加入することが可能です。
毎月数千円の組合費を支払うケースが一般的です。
弁護士
労働問題に精通した弁護士に相談することで、専門的なアドバイスやサポートを受けられます。
また、残業代請求が可能な弁護士事務所もあります。
残業ルールのキホン 知っておくべきポイント まとめ
残業は多くの会社で避けられない現実ですが、適切な管理がされていないと労働者の健康リスクに影響を及ぼします。
最後にもう一度、内容を確認しましょう。
まとめ
- 残業とは法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働時間などを指す
- 法定労働時間を超える労働は36協定が必要
- 月45時間、年360時間を超える残業は原則禁止
- 時間外は1.25倍、休日労働は1.35倍、増深夜残業は0.25倍
ブラック企業は残業違反をしているケースがほとんどなので、どのようなことが違反かを理解しておきましょう!
残業ルールのキホン:知っておくべきポイントに関するQ&A
残業って何ですか?
残業とは法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働く時間のことなどを指します。⇒詳しくはこちら
残業代はどうやって計算するの?
時間外は1.25倍、休日労働は1.35倍、増深夜残業は0.25倍です。⇒詳しくはこちら
残業時間には上限があるの?
はい、残業時間には上限があります。⇒詳しくはこちら
この記事の監修者
社会保険労務士 タカハシ
顧問先100社を持つ社会保険労務士事務所の代表。
日々の労務相談の経験から、リアルなブラック企業の実態を知る。
ブラック企業を減らし、幸せな職場を増やすべく日々奮闘中。