- 毎日残業を強制されて疲れ果てている
- 残業を断ると上司から嫌味を言われる
- 残業代が支払われるか不安になる
長時間労働が当たり前の職場環境で、心身ともに疲弊している方は多くいます。
残業を強制されることに違和感を覚えながらも、断り方がわからず悩む方は珍しくありません。
この記事では、残業の強制に関する法的な知識や対処法を解説します。
記事を読めば、自分の権利がわかり、適切に残業を断る方法を学べます。
残業を強制されても、必ずしも応じる義務はありません。
36協定の上限を超える残業や合理性のない残業命令は違法です。
正当な理由がある場合、労働者に認められた権利なので無理をせずに残業を拒否しましょう。
残業の基礎知識

残業は多くの会社員にとって身近な問題です。
残業の強制に対処するためには、基礎知識を押さえましょう。
残業の基礎知識を以下の項目で解説します。
- 残業とは所定労働時間を超えて労働すること
- 残業の種類
残業とは所定労働時間を超えて労働すること
残業とは、法定労働時間や会社が定めた所定労働時間を超えて働くことです。
一般的に1日8時間、週40時間を超える労働が残業に該当します。
時間外労働とも呼ばれ、残業は労働基準法によって規制されています。
原則として労働者の同意を得たうえで、残業代(割増賃金)の支払いが必要です。
過剰な残業は健康被害のリスクやワークライフバランスの崩れ、生産性と業務効率の低下につながるリスクが生じます。
残業が常態化すると、企業にとってもコスト増加につながる可能性があるため、適切な管理が重要です。
残業の種類
残業にはさまざまな種類があります。
主な残業の種類は以下のとおりです。
- 法定時間外労働
- 法定休日労働
- 所定時間外労働
- 法定外休日労働
- 深夜労働
制度によって、通常の残業とは異なる計算方法が適用される可能性があります。
残業の種類を知ると、自分の労働環境や権利を理解できます。
» 休日出勤と代休に関する基礎知識から効率的な管理方法まで解説
» 休日出勤を拒否できるケースとできないケースを解説
残業を強制しても適法となる要件

残業の強制が適法となる要件は以下のとおりです。
- 36協定が締結されている
- 労働契約に残業に関する記載がある
- 残業命令に合理性がある
36協定が締結されている
36協定は、労働基準法第36条にもとづいて結ばれる労使間の取り決めです。
労働者の健康と権利を守りつつ、企業の業務遂行を可能にする役割を果たしています。
協定により法定労働時間を超える残業が可能になります。
協定の締結には、労働者の過半数を代表する者と使用者の合意が必要です。
36協定には、残業の上限時間や対象になる業務、有効期間が含まれます。
締結された36協定は労働基準監督署への届け出が必要です。
企業は法令に沿った形で残業を実施できます。
36協定が締結されていても無制限に残業を強制できるわけではありません。
2019年4月と2020年4月に適用された残業時間の上限規制により、原則として残業の上限は月45時間、年360時間です。
労働契約に残業に関する記載がある

労働契約に残業に関する記載があることは、残業を強制しても適法となる重要な要件の一つです。
具体的な記載があると、労働者と使用者の間で残業に関する合意が明確になります。
雇用契約書には、以下の残業に関する内容が記載されていることが理想です。
- 残業の頻度や上限時間
- 残業手当の計算方法や支払い条件
- 残業を命じる際の手続きや通知方法
- 残業を拒否できる条件や手続き
記載があると労働者は自身の権利を理解し、適切に対応できます。
一方で、雇用契約書に残業に関する記載されていても、残業の強制が完全に適法になるわけではありません。
労働契約の内容は、労働基準法に準拠している必要があります。
労働者の同意を得て作成されていることも重要です。
定期的な契約内容の見直しや更新の仕組みにより、良好な労使関係を築けます。
» あなたの労働環境は大丈夫?残業時間の上限に関する法律と基礎知識
残業命令に合理性がある
残業命令に合理性があるケースはさまざまです。
業務上の必要性や緊急性がある場合、残業命令は正当化される可能性があります。
残業命令に合理性が認められるケースは以下のとおりです。
- 締め切りが迫っているプロジェクト
- 突発的なトラブル対応
- 繁忙期の業務量増加
残業命令が合理的と判断されるためには、労働者の個別の事情への配慮も重要です。
残業命令の際には事前に十分な説明を行いましょう。
残業の目的や予想される終了時間などを明確に伝えると、労働者の理解を得やすくなります。
労働時間や業務内容が過度な負担にならないように注意してください。
長時間労働が常態化すると、従業員の健康被害や生産性低下につながる恐れがあります。
残業の強制が違法となるケース

残業の強制が違法となるケースについて説明します。
以下のケースでは違法になるため、注意が必要です。
- 36協定の上限を超える場合
- 残業命令に合理性がない場合
- 残業代が支払われない場合
36協定の上限を超える場合
36協定で定めた時間外労働の上限を超える場合、残業の強制は違法になります。
基準を超えて残業を強制すると労働基準法違反となり、労働者の健康を害する可能性があります。
過労死のリスクも高まるため注意が必要です。
36協定の上限を超える状況は以下のとおりです。
- 法定の時間外労働の上限を超過
- 特別条項適用でも年720時間超
- 単月100時間未満、複数月平均80時間以内の基準超過
- 残業時間が月45時間を超過する回数が年6回超
変形労働時間制を採用している場合であっても、上限があります。
1年単位の変形労働時間制では年間320時間、1か月単位では月42時間を超える時間外労働は認められません。
上限を超える場合は人事部門に相談し、改善が見られなければ労働基準監督署への相談も検討しましょう。
残業命令に合理性がない場合

残業命令に合理性がない場合、命令に従う必要はありません。
合理性がない残業命令とは、業務上の必要性や緊急性がない場合を指します。
合理性がない場合の具体例は以下のとおりです。
- 期日に余裕があるのにかかわらず残業命令
- 特定従業員への偏った残業命令
- 従業員の健康状態や家庭事情を無視
- 突発的な残業命令
会社側には業務の効率化やリソースの適切な配分を行う責任があります。
残業命令の合理性がないと感じた場合は、上司や人事部門に状況を説明し、改善を求めてください。
改善が見られない場合は、労働基準監督署への相談も選択肢の一つです。
自分の権利を守るためにも、残業命令の合理性について理解を深めましょう。
残業代が支払われない場合
残業代が支払われない場合、労働基準法違反になるので早急な対応が必要です。
残業代の未払いは賃金の不払いに該当します。
法律にもとづいて使用者は、割増賃金を支払う義務があります。
3年間の時効があるため、過去3年分の請求が可能です。
残業代が支払われない場合は残業時間の記録や証拠を保管したうえで、労働基準監督署に相談や申告をしましょう。
労働審判や訴訟の実施も検討してください。
未払い残業代の請求は、在職中でも退職後でも可能です。
支払いを拒否する場合は、法的手段を検討する必要があります。
自分の権利を守るためにも、適切な行動を取りましょう。
残業の強制を拒否できる正当な理由

残業の強制を拒否できる正当な理由は以下のとおりです。
- 体調不良の場合
- 妊娠中や育児中の場合
- 介護が必要な場合
体調不良の場合
体調不良は残業を拒否できる正当な理由の一つです。
長時間労働は心身の健康に悪影響を及ぼし、生産性の低下につながります。
以下の体調不良の症状がある場合、残業は断れます。
- 極度の疲労感
- 頭痛や吐き気
- めまいや立ちくらみ
- 高熱
- 腰痛や関節痛
体調不良の症状がある場合は、上司に具体的に伝えましょう。
必要に応じて医師の診断書を提示すると、説得力が増します。
慢性的な体調不良の場合は産業医や保健師に相談し、意見書を取得する方法も効果的です。
労働安全衛生法では、事業者に従業員の安全と健康を守る義務があり、体調管理のための配慮を求められます。
体調不良を理由に残業を断る際は、自身の健康状態が業務効率の低下につながる可能性も説明してください。
会社にとっても従業員の生産性低下は問題となるので、効果的に断れます。
妊娠中や育児中の場合

妊娠中や育児中の従業員は、労働法によって特別な保護が設けられています。
妊婦や産後1年未満の女性は、時間外労働や深夜業の拒否が可能です。
子育て中の従業員も、時間外労働の免除を申請できます。
3歳未満の子を養育する従業員は、所定外労働の免除を請求できます。
小学校就学前の子を養育する従業員は、1か月で24時間、1年150時間を超える時間外労働の拒否が可能です。
育児・介護休業法により、子育て中の従業員の深夜業を制限できます。
保護措置は法律で定められているため、会社側は従業員の申し出を正当な理由なく拒否できません。
残業を拒否したことで降格や解雇などの不利益を受けた場合は、労働基準監督署に相談してください。
介護が必要な場合
介護が必要な場合は、残業を拒否する正当な理由になります。
家族の介護は重要な責任であり、仕事との両立が難しい状況にあるためです。
介護に関して以下の場合に残業の拒否が認められます。
- 要介護認定
- 介護サービス利用
- 定時帰宅
- 送迎・付き添い
介護休業の取得も、残業を拒否できる正当な理由です。
介護疲れによる体調不良がある場合も、自身の健康を守るために残業を断れます。
ただし、介護を理由に残業を拒否する際は事前に上司や人事部門に状況を説明し、理解を得ておきましょう。
会社側と話し合い、介護と仕事の両立ができる働き方を検討してください。
残業を強制されたときの対処法

残業を強制されたときの対処法は以下のとおりです。
- 上司に状況を相談する
- 労働契約書や就業規則を確認する
- 専門家に相談する
- 労働基準監督署へ申告する
さまざまな方法を試すと、適切に問題を対処できる可能性が高まります。
上司に状況を相談する
上司への状況の相談は、残業の強制に対処する重要な対処法です。
適切なコミュニケーションを取ると、問題解決の糸口が見つかる可能性があります。
上司との面談では、自分の状況を具体的に説明しましょう。
長時間労働が続いている事実や体調への影響、プライベートへの支障などを丁寧に伝えることが大切です。
感情的にならず、冷静に事実を述べましょう。
残業が困難な理由を述べると効果的です。具体例を以下に示します。
- 体調不良や持病が悪化している
- 家族の介護や育児の必要性がある
- 通院や治療のスケジュールに支障がある
問題解決に向けた提案も効果的です。
業務の効率化や優先順位の見直し、人員補充の検討など、具体的な案を示すと建設的な話し合いができます。
上司との面談後は、話し合いの内容を記録に残しておきましょう。
後々のトラブル防止にもつながります。
労働契約書や就業規則を確認する
労働契約書や就業規則の確認は、残業の強制に対処するうえで重要です。
確認すべき項目は以下のとおりです。
- 残業に関する規定や上限時間
- 36協定の内容と適用状況
- 残業手当の計算方法や条件
- 残業拒否に関する規定
- 休日出勤や深夜勤務の規定
- 労働時間の管理方法
- 有給休暇の取得規定
情報を把握しておくと、不当な残業の強制に対して適切に対応できます。
自分の権利を守るための根拠にもなります。
労働条件に疑問がある場合は、会社の相談窓口を確認しましょう。
専門家に相談する

専門家への相談は、労働問題の解決に不可欠です。
有用な助言を得たうえで自分の権利を守りつつ、適切な対処法を見つけられます。
労働問題に詳しい弁護士や社会保険労務士への相談が効果的です。
労働法や雇用契約に関する深い知識を持っているため、アドバイスが的確です。
労働組合や労働相談センターも、労働者の味方として相談に乗ってくれます。
無料または低料金で相談が可能です。労働局の総合労働相談コーナーやNPO法人などの労働相談窓口、オンライン相談サービスの活用もおすすめです。
状況によっては、退職代行サービスの利用を検討しましょう。
メンタル面でのサポートが必要な場合は、カウンセリングや産業医の支援を受けると効果的です。
専門家に相談する際は自分の状況を説明し、必要な書類を用意しておくと、より的確なアドバイスを受けられます。
労働基準監督署へ申告する
労働基準監督署への申告は、労働問題を解決する有効な手段です。
窓口や電話で行えますが、匿名での申告は詳細な調査が難しくなる場合があります。
申告する際は、具体的かつ客観的な事実を提示し、証拠となる資料(タイムカードのコピー、給与明細など)を用意しましょう。
個人情報は保護されるので安心です。
申告後、労働基準監督官が会社に立ち入り調査を行います。
違法行為が確認された場合、是正勧告や指導が行われます。
申告による不利益な取り扱いは法律で禁止されているため、心配する必要はありません。
一方、申告から解決までには時間がかかる場合があるため、粘り強く対応しましょう。
労働基準監督署への申告は、労働者の権利を守るための重要な手段です。
残業の強制に関するよくある質問

残業の強制に関するよくある質問を以下にまとめたので参考にしてください。
- 残業を拒否し続けるとどうなる?
- アルバイトやパートでも残業を拒否できる?
- 残業代が支払われないときの対処法は?
残業を拒否し続けるとどうなる?
残業を拒否し続けると、さまざまな影響が考えられます。
人間関係の悪化や解雇・配置転換リスク、キャリアの停滞が主なリスクです。
しかし、正当な理由があれば残業を拒否しても問題ありません。
長期的には自分の健康や私生活が守られ、労働環境の改善につながる可能性もあります。
労働基準法違反の是正にもつながり、新しいキャリアを考えるきっかけにもなります。
残業の拒否には良い面と悪い面があるので、自分の状況をよく考えて判断しましょう。
» 職場環境の改善が必要な会社の特徴と改善方法・注意点
アルバイトやパートでも残業を拒否できる?

アルバイトやパートタイマーでも残業を拒否できます。
正社員と同じく労働基準法の適用を受けるので、原則として残業を断る権利があります。
残業を拒否できるケースは以下のとおりです。
- 36協定が締結されている
- 労働契約で残業の合意がある
- 正当な理由がある
残業を求められた場合は、丁寧に理由を説明して断りましょう。
繰り返し強制されるようであれば、労働基準監督署に相談するのも方法の一つです。
残業を拒否したことで不利益な扱いを受けるのは違法です。
アルバイトやパートタイマーでも、権利は保障されるので適切に対応してください。
残業代が支払われないときの対処法は?
残業代が支払われない場合、労働時間を正確に記録することから始めましょう。
自分の労働時間を把握すると、未払いの残業代が明確になります。
会社に請求する際は、記録した労働時間をもとに残業代の計算方法を確認し、具体的な金額を示します。
会社が支払いに応じない場合は労働基準監督署や労働組合、弁護士などの専門家に相談してください。
未払い賃金請求訴訟を起こすことも選択肢の一つです。
労働時間の記録や給与明細などの証拠を収集・保管しておくことが重要です。
残業代が支払われない状況が続く場合は、退職を検討しましょう。
退職前に労働条件通知書や就業規則を確認し、自分の権利を守るための情報を収集しましょう。
労働基準法の規定を理解し、時効に注意することも重要です。
未払い賃金の請求権は3年で時効になるので、早めの対応が必要です。
まとめ

残業には適法と違法の境界線があります。
36協定の締結や労働契約の内容、残業命令の合理性などが重要な要素です。
体調不良や育児、介護などの正当な理由があれば、残業を拒否できます。
違法な残業強制に悩まされている場合は、上司に相談したり専門家にアドバイスを求めたりしましょう。
労働基準監督署への申告も効果的です。
1人で抱え込まず、相談をしながら適切な行動を起こしましょう。
労働環境の改善は人生の質を大きく左右します。
転職も視野に入れつつ、適切な対応で残業の強制を回避しましょう。