「全員管理職って…まさかうちもブラック企業?」
毎日遅くまでサービス残業、理不尽な指示に疲弊していませんか?
実はそれ、ブラック企業の常套手段かもしれません。
この記事では「全員管理職で残業代節約」という衝撃的なブラック企業を元に、その実態と見分け方を分かりやすく解説。
私は労務管理に15年携わってますが、今までの経験を活かし、より具体的に分かりやすくブラック企業の実態をお伝えします。
あなたの会社が当てはまっていないか、具体的な事例を通して確認できます。
もう騙されない!
ブラック企業を見抜き、適切な対処法を身につけて明るい未来を掴みましょう。
衝撃ブラック発言!「全員管理職にして残業代を節約しようと思ってさ」
最近顧問先になった社長から連絡がありました。
人事制度についてのご相談です。
先生、お世話になります。
今いいですか?
あ、社長、いつもお世話になります!
はい、大丈夫ですよ。
わが社の人事制度について、相談したいんですよ。
はい、人事制度ですね。
等級を決めるとか、昇給の基準の作成とかですかね。
そうそう、そのあたりなんだけど、従業員の役職の名前を一新したいんですよ。
そうなんですね。
具体的には課長、部長といった役職名を変えるイメージでしょうか?
そうそう、ちょっと呼びやすいようにマネージャーとアシスタントマネージャーにしようと思ってるんですよね。
そうでしたか。
たしかに呼びやすいし、今の若い方には横文字の方が印象が良さそうですね。
課長がマネージャー、課長補佐がアシスタントマネージャーとかですか?
いや、基本的に役職者以外は全員アシスタントマネージャー、課長クラスはマネージャー、あとは部長で行きたいんだよね。
つまり、部長、マネージャー、あとは全員アシスタントマネージャーって感じ。
え?
役職者以外は全員アシスタントマネージャーですか?
その名前を付けるって、なにか意味があるんですかね?
正直それだと、名前付けなくてもいいような気がして・・・。
いやいや、全員管理職にして残業代を節約しようと思ってさ。
ほら、マネージャーっていう単語が入っていれば管理職っぽいでしょ?
管理職は残業代が対象外じゃない?
その制度を使いたいんだよね。
・・・・・・。
う~ん、社長、それってかなりブラックな気がしますね。
もし労働基準監督署が入ったら「アシスタントマネージャーで管理職だから残業代払ってない」って言うつもりですか?
まあ、そんな感じだね。
ていうか、オレの社長仲間が大丈夫って言ってたよ?
そうですね・・・。
まず、管理職かどうかを判断するのは労働基準監督署になります。
労働基準監督署が管理職ではないって言えば、逆らうことは出来ないですね。
そして、何をもって管理職と判断するかというと実態なんですよ、名前ではなくて。
実態って何で判断するの?
はい、その方の働き方です。
働き方が管理職に該当するかなんですよね。
ちなみに、正式には管理監督者と呼びます。
ざっくりいうと、企業の重役的な方が該当します。
まず、出勤時間が決められていないこと。
あとは人事異動権を持っている方です。
平社員の方をアシスタントマネージャーって呼んでも、実態が伴わないと管理監督者とは判断されないんですよね。
・・・・・・・。
じゃあ、残業代は節約できないってこと?
はい、残念ながら・・・。
正直、実務上は管理監督者の判断って結構難しいんですよ。
私も労働基準監督署に管理監督者の判断を聞いたことが何回かあるんですが、みなさんはっきり言わないんですよ。
「厚労省のパンフレットを見てくれ」と言われて終わり・・・ていうのが結構あります。
ふ~ん、そうなんだね。
厚労省の見解もあいまいな表現が多くて数字的な基準が少なく、労働基準監督署も明言を避けてしまう感じです。
ただ、一方で負け裁判が多いんです。
つまり、管理監督者の活用ってリスクが大きいんですよね。
そうなると、せっかく人事制度を変えたとしても残業代の節約につながらず、ペナルティが加わり大きな問題を抱え込んでしまう可能性があるんです。
そっか・・・。
じゃあ、やめた方がいいかな。
はい、役職の呼び名で残業代節約っていうのはマズいです。
お友達の社長さんの話は直接聞いてはいないんですが、ちょっとリスクが大きいですね。
なるほどね。
じゃあ、ちょっと考え直してみるかな。
残業代の支払いってデメリットでもないと思うんですよね。
もちろん法的に支払いが義務付けられていますけど、支払うことが今時は当たり前になってきてますよ。
日本は少子高齢化で、いろんな業界で人不足です。
法令を守ることは定着率のアップに効果がありますし、社内トラブルも減ります。
経営に集中できる環境になりやすいんですよね。
そっか、じゃあ前向きに考えてみるかな。
そうですね、法令順守で良い会社を作っていきましょう!
ブラック企業の社長の特徴
ブラック企業の社長は、一般的に従業員に過酷な労働を強いることで知られています。
彼らは非常に才能がありビジョンを持っていることが多いですが、自己中心的で他人への共感が欠如しており、目標達成のためなら手段を選ばないケースがあります。
具体的な特徴としては下記があります。
ブラック社長の特徴
- 権威主義的な性格
- 行き過ぎたコスト削減志向
- 従業員の意見を無視する傾向
上記のような露骨な残業代削減といった行為は法令違反であり、犯罪行為に当たります。
残業代を支払わないという行為は問題になりやすいので、従業員には分からないようにして巧妙に残業代を削減しようとすることがあります。
具体的な事例として3つご紹介します。
残業代削減のワザ 一ノ型
ノルマをクリアしたら残業代を払うといった条件付き支払い
残業代削減のワザ 二ノ型
会社の業績が良くなったら払うといった悪質な業績至上主義
残業代削減のワザ 三ノ型
賞与が残業代の代わりという法令完全無視タイプ
これらは完全に法令違反で、認められるものではありません。
さらにブラック企業の残業代を払わないあの手この手を知りたい人は、【実録】ブラック社長のヤバい衝撃発言 残業時間は休憩で吸収編の記事を参考にしてください。
ほんとあの手この手を考えるんだから。
こういうブラック企業って結構、労働基準監督署に調査に入られて数百万取られてます。
しっかり反省してください!
ブラック企業はなぜ残業代を払わないのか
ブラック企業の社長が残業代を払いたくない理由の一つは、企業のコスト削減を目指しているからです。
コスト削減により企業の利益を増やすことが目的で、法令違反をしてまでも利益追求を目指す為です。
しかし、このような短期的な利益追求の考え方は、長い目で見ると会社に下記のような悪影響を与えることになります。
短期的な利益追求の悪影響
- 従業員の離職率が上がる
- 離職が多くなり採用コストが増える
- 従業員の士気が低下し生産性が下がる
また、社長が残業代を支払わないことで、従業員に対して労働時間を短縮し、無駄を省くことを強制する狙いがあります。
「長く働いても残業代出ないなら、なるべく残業しないようにしよう」といった意識を植え付けるのが目的です。
しかし、これによって従業員は過労やストレスがたまり、生産性低下や業務上の事故、うつ病などが発生する可能性があります。
また、とにかく成果を出そうと従業員同士の競争が激しくなり、職場の人間関係が悪化することもあります。
このような環境は従業員のモチベーション低下につながり、長期的には企業の業績に悪影響を与える可能性があります。
残業代の基本的なルールを知りたい方は、残業ルールのキホン 知っておくべきポイントを見てください。
ブラック企業がなくならない本当の理由 社長仲間の話を真に受けてしまう
社長の皆さんの話を聞いていると、労働法の知識不足なことが結構あります。
色々な要因があると思いますが、法律って難しそう・・・といったイメージが大きいのではないでしょうか。
あくまで私見ですが、社長さんのホンネはある程度予想できます。
一般的に社長がお付き合いをしている方は、同じく社長が多いでのす。
そうなると、「こういう裏技があるぞ!」とか「こういう抜け道があるらしい!」といったことが話題になりやすいんだと思います。
つまり労働法を勉強するというのではなく、勉強せずにどうやったら近道でデメリット回避できるかを知りたい。
そこが、安易に目先だけの利益を追求してブラック企業を作ってしまう、本当の理由だと言えるでしょう。
一方で従業員さんは社長よりも労働法に詳しい方も多く、会社の不備を把握しているケースが多いです。
そこで、色々な条件が重なると労働トラブルに発展する・・・というのが良くあるトラブル発生のパターンです。
今回のケースは正にそれで、社会保険労務士と契約していれば引き止められますが、契約しておらず社長仲間の話を真に受けて実行してしまうと、会社は大変なリスクを抱えてしまいます。
従業員さんもたまったものではありません。
そして、実はこの方法を実行している会社も残念ながら存在します。
そういったブラック企業偏差値が高い会社で働いている方は、転職も視野に入れたほうが良いでしょう。
エマ先生、名前で残業代払わなくて大丈夫って、おかしいと思わないんですかね?
それほど、従業員さんのことを軽んじているんだと思う。
裏技とか言って、ゲームじゃありません!
管理監督者の法律ってあるの?
労働基準法に管理監督者に関する定めがあります。
たしかに管理監督者は残業代の対象外といった考え方があるのですが、それを悪用しようとした会社も結構あります。
多くの裁判は会社の負け裁判となっているので、詳細を見てみましょう。
管理監督者の法的なルール
労働基準法には下記の条文があります。
この章 ~ 中略 ~ で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は次に該当する労働者については適用しない。
事業の種類にかからわず監督若しくは管理の地位にあるもの、又は機密の事務を取り扱う者
引用元:労働基準法第41条
これは簡単に言うと、管理監督者は1日8時間、1週間40時間といった制限がなく、割増賃金も対象外ですよ、という意味です。
おなじく、休憩を取らなければならない対象ではなく、また休日を与える対象ではないですよ、ということになります。
よって、休日を与えないことで本来は割増賃金が1.35倍以上つきますが、この人は対象外という意味も含んでいます。
では、管理監督者はどのような判断基準があるのか見てみましょう。
管理監督者の基準って何?
基準は大きくは3つで判断します。
一つ目、まずはお仕事の内容、責任の重さと権限の大きさで判断します。
たとえば、採用する権限があるかどうかです。
具体的には飲食店でパート・アルバイトを採用する権利がないと、管理監督者ではない可能性が高まります。
パート・アルバイトを解雇する権限、人事評価を行う権限、シフト作成や時間外労働を命じる権限があるかどうかを判断します。
これらもないのであれば、管理監督者ではない可能性が非常に高くなります。
二つ目、勤務の形態についても判断します。
たとえば、遅刻すると怒られる、勝手に現場を抜けられない、部下やパート・アルバイトと同じような業務が多い場合は管理監督者ではない可能性が高まります。
三つ目、賃金の額で判断します。
一般的な相場の額が払われているかどうかで判断します。
たとえば、平社員と同じような額では管理監督者ではない可能性が高くなります。
また金額が高くても残業時間も多く、時給換算するとパート・アルバイトの時給に満たないという場合も管理監督者ではないと判断されます。
これを一言でまとめると、日本の管理監督者は実際は取締役のような方だけ、と言えるでしょう。
これって、管理監督者ほとんどいなくないですか?
人事権があって、シフト拘束されてなくて、お給料高いって・・・。
だよね。
企業の取締役以外はほとんど見当たらないな~。
悪用厳禁だよ!
企業が結構負けてます 裁判例
この管理監督者制度を悪用した会社がたくさんあり、負け裁判が多く存在します。
実際に見てみましょう。
レストランビュッフェ事件 (管理監督者ではないと判断)
争点:時間外労働を実施した分の割増賃金の支払の必要があるかないか
地位:ファミレスの店長
・店長として従業員を指揮、パート・アルバイトの採用も実施していて店長手当の支給も受けていたが、従業員の給与等は経営者が決定していた。
・店舗のシフト時間を守る必要があり、出勤時間や退勤時間の自由はなかった。
・店長業務だけでなくコック、ウェイター、レジ、掃除など雑務も含めて実施していた。
引用元:大阪地裁判決 昭和61年7月30日
インターパシフィック事件 (管理監督者ではないと判断)
争点:時間外労働を実施した分の割増賃金の支払の必要があるかないか
地位:ベーカリー部門と喫茶部門の店長を兼務
・売上金の管理権限やパート・アルバイト採用の権限がなかった。
・店舗のシフト時間を守る必要があり、毎日タイムカードに打刻していた。
・正社員としての賃金は支給されていたが、その他の手当は全く支払われていなかった。
引用元:大阪地裁判決 平成8年9月6日
マハラジャ事件 (管理監督者ではないと判断)
争点:時間外労働を実施した分の割増賃金の支払の必要があるかないか
地位:インド料理店の店長
・店長業務だけでなくコック、ウェイター、レジ、掃除など雑務も含めて実施していた。
・店員を採用する権限、労働条件を決める権限がなかった。
・店舗のシフト時間を守る必要があり、出勤時間や退勤時間の自由はなかった。
・正社員としての賃金は支給されていたが、その他の手当は全く支払われていなかった。
引用元:東京地裁判決 平成12年12月12日
育英舎事件 (管理監督者ではないと判断)
争点:時間外労働を実施した分の割増賃金の支払の必要があるかないか
地位:学習塾の営業課長
・人事的な管理業務の事務を担当していたが、裁量的な権限が認められていなかった。
・シフト時間を守る必要があり、出勤時間や退勤時間の自由はなかった。
・正社員としての賃金は支給されていたが、その他の手当は全く支払われていなかった。
引用元:札幌地裁判決 平成14年4月18日
日本マクドナルド事件 (管理監督者ではないと判断)
争点:時間外労働を実施した分の割増賃金の支払の必要があるかないか
地位:ハンバーガー店の店長
・パート・アルバイトの時給の決定やシフト作成などを有していたが、社内の重要事項の決定には関与していなかった。
・パート・アルバイトの採用の権限はあるが、正社員採用などは本社が決定していた。
引用元:東京地裁判決 平成20年1月28日
これらのように、多くの会社が管理監督者をめぐって負け裁判を繰り返しています。
もしあなたの会社の人事制度で、管理監督者の扱いがおかしいと思ったら、上記判例と見比べてみましょう。
知識は力、自分の身は自分で守っていきましょう!
エマ先生、名前だけ管理監督者のなんとかマネージャーにして、残業代払わないってマジやばいですね。
そう、マジやばいと思う。
そしてそれを社長さん仲間で話しているのって、もっとヤバい。
そんな場面想像したくないな~。
結局、社長も類友なんでしょうかね?
同じ考えの社長同士が仲いいっていう。
そういうのはあるかも。
従業員さん想いで、本当に尊敬できる社長さんもいるしね。
そんな会社は心から応援したくなる。
それはありますね。
やはり社長を見極めるには、日ごろから法的な知識を身につけなきゃだな~。
ブラック企業って表面上は分からないですからね!
厚労省が公表するブラック企業の会社名を知りたい方は、厚労省が公表!法令違反のブラック企業リストの記事を参考にしてください。
ブラック社長ヤバい衝撃発言 全員管理職で残業代節約編 まとめ
ブラック企業から自分の身を守るために、残業代の対象外の管理監督者を知るのはとても重要です。
最後にもう一度、内容を確認しましょう。
まとめ
- 1日8時間、週40時間を超えたら割増賃金となる
- 月給制の場合は月給を月の所定労働時間で割ったものを1.25倍する
- 休日労働は1.35倍で計算する
- 時間外労働が60時間を超えたら1.5倍で計算するようになった
ブラック企業は残業代の違反をしているケースがほとんどなので、どのようなことが違反かを理解しておきましょう!
ブラック社長のヤバい衝撃発言に関するQ&A
ブラック企業の社長ってどんな特徴がありますか?
自己中心的で他人への共感が欠如していることがあります。⇒詳しくはこちら
ブラック企業の社長はなぜ残業代を払わないのですか?
コスト削減により企業の利益を増やしたいからです。⇒詳しくはこちら
管理監督者ってどんな人ですか?
権限が大きく勤怠の自由があって報酬が高額な人です。⇒詳しくはこちら
この記事の監修者
社会保険労務士 タカハシ
顧問先100社を持つ社会保険労務士事務所の代表。
日々の労務相談の経験から、リアルなブラック企業の実態を知る。
ブラック企業を減らし、幸せな職場を増やすべく日々奮闘中。