この記事はブラック企業にお勤めで、なぜブラック企業がなくならないかと思っている方に向けて書きました。
ブラック企業の社長の本音はどんなことを考えているのか、実話を元に再現しました。
うちの事務所とお付き合いのある企業は素晴らしい会社が多いのですが、一部ブラックな状態を改善しようとしない会社もあります。
この記事を読めばなぜブラック企業が存在するのか、そしてその企業の将来がどうなるかを予測することが出来るようになります。
なかなか表に出てこない情報を知り、ブラック企業から身を守れるようになりましょう。
衝撃ブラック発言その1 有給で働かせてもモチベーションは下がらない
ある日社労士を探しているという社長から電話を受けました。
日程を調整し、社長と面談をしに会社に伺うことになりました。
初めまして、来ていただいてありがとうございます。
初めまして、この度はお問い合わせありがとうございます。
社労士をお探しとのことですね?
そうなんですよ、前任の社労士が病気で契約を解除したんですよ。
色々相談できる社労士を探しています。
そうでしたか。
早速なんだけど先生、この前セミナーで聞いたんだけど有給で働かせてもいいんだよね?
は?
有給で働かせるんですか?
そうそう、有給で働かせるの。
選択制にすればいいんだよね?
はあ。(心の声:ちょっと何言ってるか分からない)
給料を下げておけばいいんでしょ?
うーん。
社長、済みません、そのセミナーの資料拝見しても良いでしょうか?
はいはい、ちょっと待ってて。
あれー?この前の資料どこだったかな。
ごめんなさい、今手元にないや。
そうでしたか。
社長済みません、確認ですが有給で休暇を取らせるのに仕事させるってことですか?
そうだよ、何か問題ある?
それって休暇にならないですよね?
ていうか有給にして働かせるってブラックですよ。
ヤバくないですか?
そうかな、だって本人に選ばせるんだからいいんじゃないの?
いや、法的にヤバいですし、そもそも従業員さんの士気が落ちますよ。
いや、士気は落ちないよ。
ちゃんと話せばわかるよ。
社長、それ本当にヤバいです。
有給休暇ってもともと休みを取りやすくする趣旨があるんですよ。
普通休むとお給料が減るので休みづらいですよね?
有給はお給料が出る休みなので、働く側からすると安心して休める制度なんです。
その当日に働かせるのはアウトですよ。
そうなの?
ちなみに有給を安く買い取ることは出来るんでしょ?
有給って休暇を与えることが趣旨なので、買い取りは出来ないんですよ。
まあ、例外として退職の時は有給消滅があるので買い取りはありますが、そうでなければ買い取りは出来ません。
ふ~ん、そうなんだ。
やっぱり、働く人の気持ちを考えた方が結果的に良い会社になりますよ。
正直働く人の気持ちって言われても分からないんだよね。
オレ、2代目だし。
・・・・・・・。
ブラック企業がなくならない理由 セミナーでだまされる
よくよく話を聞いてみると、とある労務管理セミナーに定期的に参加しているとのことでした。
ただ、おそらく社長が法的な原則を分かっていないような内容で、話を聞いていて非常に危なっかしい印象。
多分そのセミナーも弁護士や社会保険労務士といった法律を分かっている人ではなく、怪しいコンサルが開催している可能性もあります。
この手のセミナーは社長に耳障りのいいことをいうと人気が出ます。
問題社員をうつ病にして会社から追放する方法なんていう情報もあり、人としてあり得ない発信をしているケースもあります。
何の知識もない社長にあることないことを吹き込み、実践させようとする情報発信者がいることも、ブラック企業がなくならない理由のひとつでしょう。
エマ先生、この社長何ってるか正直分かりません。
契約したんですか?
ううん、契約にならなかった。
でも正直ホッとしてる。
この社長さんは大変そう!
なんか、2代目だから許されると思ってませんかね?
僕的にはありえないんですけど。
そうだね、人間的に未熟な人が社長さんだと周りが苦労するから。
しっかりした人に、社長になって欲しいね!
衝撃ブラック発言その2 自分も有給なかったからあげない
働き方改革が進み、年間で5日以上の有給休暇を取得する法律が出来ました。
ある社長から連絡が来て、有給休暇の問い合わせがありました。
先生?
いつもお世話になります。
あ、社長!
いつもお世話になります。
最近有給を取らせろって国が言ってるでしょ?
あれってホントに取らなきゃダメなの?
まあ、そうですね。
一応罰金もあって、1人当たり30万円なので、国も本腰を入れ始めたって感じでしょうかね。
まったく、国は会社のことを何も考えてないよね。
そんなの出来るわけないよ。
まあ、最初は大変かもしれないですね。
従業員さんも「休みたくない!」て言う方もいそうだし。
そうなんだよね。
会社に余裕もないし、何日も取られたらやってけないよ。
ちなみに、今の休みを有給にするとかありなの?
と、いいますと?
例えばウチの会社はお盆の夏季休暇、年末年始も休みなんだけどそれを有給に変えちゃうの。
そうすれば今までと何にも変わらないよね。
うーん、正直それはマズいですね。
そもそもこの改正の趣旨は有給の取得率を上げようってことなんですよね。
実際日本の有給取得率って先進国の中でも低いんですよ。
それはそうかもしれないけど、ほかの国なんか知らないよ。
オレが若いころは有給なんて取れなかったんだから。
この業界は有給なんてみんな取らないんだよ。
まあ、そうかもしれないですが・・・。(心の声:それって何十年前?)
ブラック企業がなくならない理由 情報のアップデートが出来ていない
オレの若いころは・・・とか、業界が・・・とか言っている時点で情報が古いと言えます。
業界に関係なく、優良企業は有給取得を進めているし、そういった企業は人材も豊富なケースが多いんです。
今回の会社はやはり人不足で、募集を出しても人が集まらない状態でした。
今は優良企業の間で優秀な人材の取り合いが激しく、会社間で待遇合戦の様相を呈しているといっても過言ではありません。
数十年前の成功体験が忘れられない社長はいますが、時代は常に動いているもの。
自分のコンフォートゾーンを抜け出す努力をしないと、いつか自分に跳ね返ってくるんですよね。
人不足もあって、きちんと有給を取得している会社が増えてます。
ホワイト企業アピールで人材確保したいんでしょうね。
転職活動している方は、確認したいところです。
業界的に取れないとか言われたら、ちょっと考えた方がいいかも。
年次有給休暇って実際どんなルール?
労働基準法には年次有給休暇のルールが定められています。
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用元:労働基準法39条1項
これは簡単に言うと、入社6カ月間で8割以上の出席率であれば、10日間の有給休暇を与えるという意味です。
また、6ヶ月からカウントして1年ごとに、もらえる有給休暇が増えていきます。
6か月目から数えて | もらえる有給日数 |
1年経過した時 | 11日 |
2年経過した時 | 12日 |
3年経過した時 | 14日 |
4年経過した時 | 16日 |
5年経過した時 | 18日 |
6年経過した時~ | 20日 |
具体例を見てみましょう。
例えば入社から1年6ヶ月が経過すると下記のようになります。
➀➀入社から6ヶ月経過 → 10日
➁➀から1年経過 → 11日
つまり、1年6ヶ月経過すると手持ちの有給休暇は21日となります。
また、最近は働き方改革で年間5日以上有給休暇を消化しなくてはなりません。
使用者は、有給休暇の日数のうち五日については、基準日から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
引用元:労働基準法39条7
ちなみに違反した罰則は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
年次有給休暇の罰則は1人当たりなので、10人の違反だと30万円×10人で最大300万円の罰金の可能性があります。
「オレが若いころは有給なんて取らなかったぞ!」なんて言っている時代ではないんです。
会社は有給残日数を管理する、有給管理簿の作成が義務化されました。
自分の有給残日数を確認してみよう!
まとめ
ブラック企業の社長の発言は、たいして深い考えもなく言っていることが多いんです。
うさんくさいコンサルに騙される、昔にしがみつくなどで違法なことに手を染めようとする社長がいます。
社長も人間だもの・・・で、徐々に成長してくれれば良いのですが、まったく考えを変えないブラック社長もいます。
もし会社に未来はないと思った方は、転職を視野に入れるのもありかも知れませんね。